復讐の芽 ***藤林長門守***
復讐の芽 ***藤林長門守***
地に潜る10
 宗久が伝手を使って材木問屋を買い上げて茉緒が内々に手に入れた。出来るだけ今の問屋とは無関係にしておきたい。服部の目が今まで以上に光っている。明け方に茉緒は廻船に乗り込み造船所で30人ほどを乗せて源爺の地図の材木運び出しの港に着く。
 乗せてきいた材木問屋の番頭が差配して現場の10人を紹介する。早急に造船所と宿舎の建設を始める。それで樵や漁民を駆り出して工事を開始する。茉緒はその間3人を使って周辺の地図を作る。海岸は港以外は岸壁が続いていて道などない。山側には源爺が降りてきた坂道が続く。
「ここは領主と言うような関係はないようですな」
 彼は造船所を束ねる抜け忍村の古株の源爺の同輩の年寄りだ。
「山の民をまとめる長は会ってきている。山一帯に80人ほどが住んでいて材木の切りだしは半分ほど関わっています。今回は造船に20人が回ってもらう」
「仕掛け中の南蛮船は?」
「前回の問題点を改良して後は組み立てするだけですな。必用なものは全部積んできている。宿舎は今月末には完成する。造船と材木問屋は同時に?」
「表向きは材木問屋だからなあ」
 偽の抜け忍村はこの1年くらいが用済みの期限だろう。それまでに抜け忍村からこの港への道を確保するのは源爺に任せよう。この港は大海への逃げ道に必要だ。
「港には南蛮船が入れるか?」
「底を掘らないとダメだな」
「南蛮船を同時に2隻入れてもらいたい」
「入り江を旨く使うと船体は隠せます。お頭はいつ帰られる?」
「廻船に材木を積み込んだら戻るさ。次来るまでに倉庫と50人ほどは入れる長屋を作ってもらおう」
 茉緒の頭の中では新しい構想が拡がる。










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地に潜る9
 源爺は山に入って10日になると言う。現在40人が村造りに参加している。すでに砦は完成している。3日後源爺が3人と供に戻ってくる。その間に村中を見て回った。ここに服部を迎え入れて最後の勝負に出る。だがそれも時間稼ぎでしかないかもしれない。抜け忍村を守るそのための偽の村造りだ。
「待たせたな」
 源爺が無精髭を蓄えて切り込んだ谷から降りてくる。源爺は砦に戻って新しく作った地図を見せる。
「谷を掘り進んだ。やはり尾根道に出たよ。この尾根道は2刻で別れ道に出る。ここで2組に分かれた。1つは1日で予想通りまやかしの森に出た。この別れ道は近々に塞ぐ」
「これで逃げ道が?」
「そうだ。だが面白いのはもう一つの道だ。別れ道から丸3日で紀州の海に出る。途中に村が3つあるがとくに有害な村はない。だが近くに修験者の山がある。ここは調べてみる必要がある」
「紀州の海には?」
 茉緒には漁港に造船所を造ったがあまりにも堺に近すぎる。
「材木を運び出す港があった。ここは堺の問屋の出先がある」
 茉緒は名前を控える。この問屋を買い取れないかと考える。
「ここを買い取って造船所を造りたい」
「お頭には付いていけんな」




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地に潜る8
 そろりが去って茉緒は計画を急いだ。そろりいや果心居士が言うように秀吉は天下統一を果たしたが、ますます秀吉は別人になっていく。茶々が三成を抱き込み、利休が祭りごとに口を出す。家康は反発する武将を抱き込んでいく。畿内に服部が百人は入っている。
 茉緒は第1回目の南蛮船に宗久の銀を積み込んで出発した。同じ頃秀吉の朝鮮出兵が始まっている。異国に出て見たかった茉緒だが今回は堺の下忍を15人を連れて伊賀に入った。服部が柳生も入れて百人が偽の抜け忍村の周辺に送り込まれている。
「今回は凛さまが藤林の頭の頭巾を被って偽の抜け忍村の隣山から20人の鉄砲隊を配置しました」
 繋ぎが茉緒の服部の背中にいる軍に到着している。同様に茉緒からも繋ぎが出されてる。
「凛は発砲の後半刻後に一斉に引き上げる。それまでに出来る限り背後に出る」
 指示をすると服部の見えるところまで近づいて構える。発砲が始まった。服部の前列がバタバタ倒れる。百発を打ち終えると藤林の頭の頭巾が小高い丘に見える。すでに本隊は山に入ったのだろう。
「よし今だ!」
 背後から攻撃が開始だ。半分が山に入っている。百人のうち40人は倒しただろう。茉緒は服部を引っ張るように百地まで走って抜け忍村に入る。すでに凛は戻ってきている。
「この辺りが偽の抜け忍村から目を離すのは限界だと思う」
「一度偽の抜け忍村の源爺に会ってこよう」



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地に潜る7
「地に潜ったか、茉緒」
 茉緒は問屋では窓のない地下室で寝起きしている。天井を見るが金縛りにあって動けない。このままでは殺される。だが殺気は感じない。黒い影が逃げ道にしている床から壁を動いていく。体が持ち上がって尻の穴から蛇のようなものが入ってる。
「やはり男だったか」
「そろり?」
「そろりは辞めたわ。茉緒の言う秀吉は終わったのが分かった」
 茉緒の体が燃えている。そろりのものが体中を這回っているようだ。
「山に帰る前に茉緒を抱きたいと思って探した」
「どうして分かった?」
「宗久だ。南蛮船も造っているな」
 さすがにそろりだ。
「秀吉には忍者がない。今が準備にはいい頃だ」
 茉緒の頭の中は真っ白になってくる。
「家康は着々と天下を狙っているさ。光秀が参謀に」
「やはり生きてた?」
「家康は秀吉の大返しを見て光秀の負けを確信した。それで光秀だけを救いだした。茉緒はそれを見たのではないか?秀吉は北条を落すがもう茶々の妖力に囚われている」
「怨念ですか?」
と言いかけてさすがの茉緒は気を失った。





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地に潜る6
 廻船では長崎までを往復してる。茉緒は実際に往復してみてオランダの技師を連れ帰って堺から南に下った漁村に造船所を作った。長崎に行ってみて異国に興味を持った。造船所には抜け忍村から20人を回した。ここでは大型の南蛮船を考えている。茉緒は堺ではかなりの資金を貯めこんでいた。
 秀吉は九州から反転最後の牙城北条に軍を進め始めた。この時期に速やかに抜け忍村の居場所を作りたい。茉緒は造船所の後荷隊の組頭だった下忍を連れて山に入った。途中山賊のような男達が現れて鉱山への獣道に入る。山奥に立派な屋敷があるのに驚いた。
「どうだ」
 昔の宗久だ。
「銀を掘られているとか?」
「鉄はもう辞めたわ。銀が大半だ」
「銀を売らせてください。南蛮船で異国に売ります」
「考えたな。また二人で組むか」
「私は家康に移るまでに居場所を見つけたいのです」
「異国に出る時は連れて行ってくれ」
 次の日鉱山と精錬所を案内してくれて、海に向かう間道のあることを知らされた。
「1月で間道を整備して造船所まで繋ぐのだ。荷隊の下忍を抜け忍村から呼び寄せる」
 茉緒はわくわくする心が抑えられない。






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Author:yumebito86864
夢人です。『夢追い旅』『ぽろんの女』『空白』『刺青』と書き続けてきましたが、すべて古いノートから書き起したものです。今回は初めて時代物でこれは私の夢の中で永い時間をかけて育ったものです。



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