復讐の芽 ***藤林長門守***
復讐の芽 ***藤林長門守***
秘密1
 大和国には順慶が千の兵を入れて、事実上弾正の国はなくなった。秀吉は2千の兵を連れて堺の弾正屋敷に入った。堺入りには茉緒が先陣を務めそこから今井宗久の荷を奈良まで運ぶ。久しぶりに藤林館に入る。小頭は大和の国に残って不満豪族の探索を続けている。館には茉緒の組だけしかいない。
「いいかしら?」
 あれ以来奥方とは部屋を別にしている。それに合わせ抜け忍村からの3人を付けて見張っている。
「奥方は?」
「前の小頭の倅を抱いていまする。女忍が調べてきた不思議な話があります」
 茉緒は館では頭巾をかぶっている。
「奥方に付いてきた婆や不思議なことを言っていたのです」
「婆やは実家に戻されたと聞いていたが?」
「殺されていました。その話というのは奥方はあなたさまの母ではないというのです。奥方の実家はその頃はどこにも属さない豪族で一族の反対がありました」
「婆やは双子の妹が母なのに今の奥方は姉と言っていたそうよ」
「その豪族は?」
「柘植の一族に」
「その話は?」
「婆の妹から聞いたと」
「行かねばなるまい」




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天守閣8
 翌日には織田軍が5千大和の国境を越えた。合わさるように順慶軍も3千で天守閣の裏道を登って来る。順慶軍の先駆けは慎吾が1組を率いている。茉緒は昨日から天守閣の見える森の中に潜んでいる。弾正は近隣に向け法螺貝を吹いているが兵が集まってくる様子はない。それどころか城内から千5百ほどが逃げ出している。
 弾正の姿が天守閣に見える。ほとんど同時に表門に織田軍が押し寄せてくる。順慶軍の旗竿が山間から押し寄せてくる。そんな中大屋根に白い鷲が舞い降りる。
「攻め込みますか?」
「いや出番はないわ」
 茉緒には白い鷲が果心居士に見えた。
「茉緒、弾正を黄泉の国に連れて行く」
 その声が聞えたような気がした。いつの間にか弾正の姿は消えている。織田の兵がすでに天守閣に入っている。順慶の兵は突撃をせず見守っている。織田軍とぶつかるのを避けているようだ。小頭の組が茉緒を見つけて森に入ってくる。
「天守閣から離れるの!」
 茉緒が叫んだ。その時轟音がして天守閣から火柱が上がった。白い鷲がゆっくり天守閣の周りを円を描いている。
「弾正は自爆したのか?」
「どうでしょう?」
 白い鷲は急に天守閣の上空から軌道を外れて茉緒の登っている木まで近づいてくる。果心居士が弾正を抱えている。










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天守閣7
 信長は本願寺衆に手を焼き東国の国や毛利に囲まれた状態になっている。今回は宗久に頼まれ秀吉の警護をして大和に入る。大和の国境では度々順慶の軍と戦っている。その弾正がまたもや赤松や六角の残党を京に引き入れている。将軍も今回は本願寺衆と弾正を引き合わせている。
 秀吉は20人ほどの侍とともにすでに完成した天守閣に入る。茉緒は1組を引き連れて隠れながら護衛をする。天守閣には3人で忍び込む。屋根裏には果心居士の気配も忍びの気配もない。来るまでに調べたが、天守閣を守っているのは2千の兵のみで周辺の豪族5千はすでに弾正から離れている。
「弾正殿」
 先程から秀吉が口を酸っぱくして降伏を伝えている。同様に反旗は3度にわたる。
「確かに織田は身動きとれぬほどの状況だが、弾正殿を攻める力は残っていますぞ」
 弾正は腕を組んだままだ。目が虚空を見上げている。茉緒の調べたところ京には織田の兵が5千残されている。それに順慶が織田の命で国境に3千を集めている。
 結局物別れに終わった。茉緒は木霊で弾正に話しかける。
「どこまで突っ張るのですか?」
「茉緒か?」
「後ろの山には修験者もいません」
「果心居士とも喧嘩別れをしたわ。もう戻る道はないのだ」
「どうしたのですか?」
「どこで道を間違えたのだろうか」

 



 

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天守閣6
「小頭は街道の入り口に火薬を仕掛けてください」
 これは薬売りからの繋ぎが入った。遅まきに5百を弾正が送ったようだ。茉緒も正面の順慶の隊にもそのことを伝えた。いつでも反転できる体制を取って貰った。順慶の本体は裏道を登り山城を囲んで待機する。茉緒は下忍を2人連れて石垣を登る。小頭の情報ではこの城には7百の兵が入っているという。
 屋根裏に入ると広間の上に出る。ここは山添の弾正派の豪族の拠点だ。集まった国人が円座になっている。
「順慶の軍が千ほど上り口を登り始めていまする」
「5百を繰りだせい」
 その声で国人達が立ち上がる。
「攻める合図を送れ」
 下忍が走り出す。しばらくして裏門で爆発が起こる。茉緒は木霊で床几に座っている豪族の頭に話しかける。
「裏から千の兵が押し寄せています。弾正の兵は5百で足止めされています」
「何者だ?」
「順慶の手のものです。山添はすでに順慶と組みましたよ」
「順慶と話ができるのか?」
「兵を引いてください」
「分かった」
 結局順慶とこの豪族の話が行われ戦いは終結し順慶に従うこととなった。弾正の兵は小頭の火薬玉を受け引き返してきた順慶の兵に追い返された。これで筒井順慶は大和の国が見える位置まで進んできたことになる。










 

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天守閣5
 筒井順慶が再び弾正の豪族を攻めることになり、小頭が1組を連れて千5百の兵の先導をしている。順慶にはすでに修験者は別の地に去ったと小頭から伝えている。茉緒は別部隊を連れて山添に入る。ここは弾正とは何度か戦っているが順慶が取り込みを行っている。茉緒が前もって小姓として山添の豪族の屋敷に入る。
「これは筒井順慶さまのお約束の親書です」
 ここには4豪族が集まっている。山添では多数の国人で運営されている特殊な連合国で京にも近い。だが今回は弾正派と順慶派に分かれている。ここを制することは順慶が京へ大きく進むことになる。
「山添の独立運営を請け負うわけだな?」
「あくまでも京への通り道の確保です」
「同族の戦いにも兵を出さぬ」
「今回も単独で主要な弾正派の豪族を攻めまする」
 長老が用意していた順慶への親書を差し出した。
 茉緒はそのまま街道を見張っていた下忍を連れて順慶の本陣に駆け込む。すぐに順慶の床几の前に出て親書を渡す。親書を開いてしばらく見た後、
「攻撃を開始する!」
と順慶は立ち上がる。
 小頭が残して行った繋ぎが、
「裏道を見つけたようで道を確保しています」
と言い茉緒は順慶と話をして5百に倍の旗を持たせ正面を登らせる。本体を先導して裏道を旗も取り払い登る。






 




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Author:yumebito86864
夢人です。『夢追い旅』『ぽろんの女』『空白』『刺青』と書き続けてきましたが、すべて古いノートから書き起したものです。今回は初めて時代物でこれは私の夢の中で永い時間をかけて育ったものです。



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