復讐の芽 ***藤林長門守***
復讐の芽 ***藤林長門守***
地に潜る1
「凛、元気になったらしな」
 母屋の裏に行くと父と母の墓に菊の花を挿してくれている。その横に慎吾の小さな無名の墓がある。
「慎吾の名を入れてやれ。慎太郎のためにもな」
「秀吉さまが天下を取られたのですか?」
「まだよく分からない。服部の動きは?」
「服部が再び伊賀を掌握してます。百地や藤林狩りを続けているのです。それで藤林領に定期的に鉄砲隊を出しています」
「どれくらいる?」
「それが明智の乱以降服部の部隊が2百ほど家康の元へ」
「服部は家康の策謀で動き回っている。今は秀吉さまの傘の元にいるがこの間に抜け忍村の将来を見つけないと」
「何かあったのね?」
「おそらく家康の時代が来る。準備に入る」
「何をすれば?」
「抜け忍村の偽の情報を流す。仮の抜け忍村を作る。その周辺で度々服部を襲う。でもすぐには見つられてはいけない。これは源爺に任せる。堺の店も考えてみる」
 初めて口にして茉緒は気持が吹っ切れた。
 茉緒はその夜袂を分けて1年ぶりに凛を抱いた。彼女の肌から慎吾の匂いが漂ってくる。










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天下の行方12
「ここからは尾根道は進めません」
 先に走っていた下忍が戻ってくる。
「落ち武者が流れて来ています。裏道があります」
 草むらを全力で走る。鉄砲の音が近づいてくる。
「尾根道に首だけの死体が」
 茉緒が尾根道に出ると15人ほどが倒れてる。首だけの死体の鎧は光秀のものだ。だが手が日焼けしている。まだほのかに温かさが残っている。武士が7人、農夫が8人だが半数は直刀で切られている。やはり服部が光秀を救いだした。でもこれでは光秀は死んだことになる。
「草むらに」
「よし走れ」
 半刻ほど走ると急に火薬玉が投げ込まれて、すぐに服部が10人ほど切り込んで来る。川の向こう岸に船が2艘見える。明らかに武者姿の男が乗っている。茉緒は2人を切り引き上げの合図を出した。
 明らかに秀吉の時代が来るが、次は家康がその後に控えている。家康には服部がいるので藤林には居場所がなくなることになる。
「私は秀吉さまに報告して一度は抜け忍村に戻る。皆は堺に戻り小頭に従ってくれ。小頭には堺の報告を抜け忍村に送るように」
 尾根道に戻ってくると首だけの死体はなくなって兵が辺りを取り巻いている。信長が消え光秀が消えた。なぜ光秀が謀反を起こしたのかも謎だ。そしてなぜ家康は光秀を救ったのかも謎だ。そろりはこの謎が解けたのだろうか。

 




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天下の行方11
 茉緒は秀吉の山崎の陣を確認しながら戦場になるだろう場所を探索して回る。3か所目で予想していた服部忍軍とぶつかった。
「2人が矢を受けました。服部です。前回より人数が増えています」
「こちらは?」
「正面に5人、後ろに5人を回しています」
 なぜここまで服部忍軍が出張ってきているのか。家康と光秀の約束とは?
「秀吉軍が進軍を始めました」
 見張りから伝令が来る。
「よし、切り込もう」
 草むらに踏み込むとやはり服部忍軍は移動を始めている。後ろに回った下忍と殿の服部が切り結んでいる。茉緒は峰打ちで1人を倒す。5人に追跡させ猿轡をはめた下忍を小屋に運び込む。素早く薬を飲ませる。しばらくすると目がとろんとしてくる。
「なぜここに来た?」
「救出」
「誰を?」
「あ・・・」
 そこで舌を噛んでしまう。
 家康は明智光秀を救出する?もう一つピンと来ない。
「明智軍が撤退始めました」
「撤退は?」
「この尾根道の先です」







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天下の行方10
 決断をすれば秀吉は早い。もう次の日にはすべてを投げ出して姫路に走り出した。茉緒は5人の下忍を連れて前日には姫路を抜けて尼崎に入る。用意された寺に薬売りが5人探索を終えて集まっている。京の小頭の女忍も到着ている。
「どうだ光秀は?」
「公家筋以外は馳せ参じる武将は今のところいません」
「秀吉さまの軍の大返しは?」
「まだ伝わってはおりません」
と言って山崎に陣を張った光秀の地図を差し出す。
「これをすぐに秀吉さまに届けるのだ」
「堺から新たに10人の下忍を山崎に配置しました。それが不思議なことがあります。山崎周辺に服部が20人ほど潜んでいます」
「服部と言えば家康だな。参戦した様子は?」
「家康は堺にいます。手勢は少ないですが、2百人の服部が控えてます。動きを見ているとしか」
「そろりの勘が当たるやも」
 慎重な家康は光秀が天下取ったら動くだろう。
「こちらも家康を見張っています」
「現在光秀に対抗できる畿内の勢力はありません」
「小頭は堺に戻り家康を見張を指揮するんだ」









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天下の行方9
 高松城での高松城主の切腹で慌ただしく片が付いた。どうも信長が出てくる前にという毛利と秀吉が急いだ感じがした。茉緒は京の状況が異常に気になっている。すでに薬売りは2日前に堺に戻している。下忍は半分は高松城に残りは姫路までの街道に出した。そこに京に走らせた下忍が飛び込んできた。
「お頭!」
「謀反か?」
「明智光秀が本能寺を襲撃しました。本能寺に潜っていた下忍が3人。2人は襲撃で死にました。1人は外回りにいた下忍2人が救い出しました。下忍が言うにはそろりが天井裏にいたと言うことです。彼は秀吉さまに連絡に走ると言っていたそうです」
「そろりならもう着いてる。私は秀吉さまに目通りするが、残っている下忍は全員京に向かう」
「どうなるのですか?」
「おそらく秀吉さまは天下を狙うわ」
 その足で秀吉の本陣に潜る。やはり秀吉は黒田孝高と二人きりで話している。背中にそろりを感じる。
「天下を狙う時です」
 秀吉は半刻も黙っている。
「茉緒街道の手配と光秀の動向を調べるのだ」
「分かりました」
「孝高は皆を呼べ」
「そろりさまは京へ?」
 暗闇に向かって口だけを動かす。
「秀吉は明智光秀に勝つ。問題は家康だ」

















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Author:yumebito86864
夢人です。『夢追い旅』『ぽろんの女』『空白』『刺青』と書き続けてきましたが、すべて古いノートから書き起したものです。今回は初めて時代物でこれは私の夢の中で永い時間をかけて育ったものです。



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