復讐の芽 ***藤林長門守***
復讐の芽 ***藤林長門守***
伊賀攻め11
 獣道を進むと繋ぎが駆け寄ってくる。
「山の南側に伊賀の残党が百人ほど籠っています」
 茉緒は地図を拡げて確認する。
「南側から伊賀の残党とぶつからず攻撃できる位置はあるか?」
「はい。谷から入ると峠にいる伊賀の残党とぶつかりません」
 さっそく谷に廻り込む。ここまで来ると銃撃の音が激しく聞こえる。2人の見張りが近づいてくる。
「もう2刻滝川軍の鉄砲の打ち込みが続いていて、後1刻で峠は攻め落とされそうです」
「鉄砲隊は?」
「2百ほどです」
「よし、鉄砲隊の横まで出て壊滅させたら引き上げる。見張り隊は伊賀の残党は同時に山奥に逃げるように伊賀として伝令を送ってくれ」
 この残党に慎吾や凛が残っていれば伝わるだろうと期待した。
 抜け忍村の鉄砲隊が構える。茉緒が手を上げると一斉に火を噴く。バタバタと滝川軍の鉄砲隊が倒れる。その後火薬玉が投げ込まれる。予想外の展開に滝川軍の先鋒が大混乱に陥る。早々に茉緒は引き上げを開始する。これで残党も生き残るし山奥に滝川軍を引き込んでくれるはずだ。
「予定通り残党は山に入っていきました」
「藤林はいたようか?」
「藤林のお頭の頭巾が見えました」












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伊賀攻め10
 まやかしの道に入ると忍者が湧いたように現れる。
「お頭、やはり伊賀は完敗ですな」
 源爺が顔出す。
「荷隊以外は薬売りもすべて回収を終えました」
「伊賀の状況は?」
「伊賀の中心地は筒井順慶が制圧し信長軍が皆殺しの進行をしています」
「慎吾達の報告はありますか?」
「薬売りの最後の報告では慎吾殿はお頭と山に入られたとか」
「こちらには?」
 源爺が詳しい織田軍の侵攻を地図に落している。
「滝川軍が向こうの山に3千進んできて、こちら側からは藤林館に秀吉軍が5千集結しています」
「秀吉は藤林館以上は進みません。問題は滝川軍ですね。出来るだけ本軍がこちらに向かわさないことです」
「滝川軍には見張りを出しています」
「今から鉄砲隊20人と火薬玉に10人出せますか?」
「洞窟の向こう側に待機させてます」
 この日のために大量の食糧と火薬に鉄砲40艇も運び込んでいる。戦うのではなくまやかしの道に出来る限り主力が向かわない作戦だ。






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伊賀攻め9
 百地の国境を越え藤林の館まで来る。途中農夫に変装した下忍に各裏街道への導きをぎりぎりまでさせる。館の庭に入ると最後になった年寄りが母の墓を掘り起こしたばかりだ。
「茉緒さま母上を運びまする」
「ありがとう。まだ何人か残っておるのか?」
「見張りをしている3人だけです」
「私の手勢で借りるが?」
「腕の立つ者はいませんが?」
「伊賀の農民を裏街道から奈良に先導する」
 館の前にも逃げる農夫の姿が目立ってきた。
 1刻が経ったころ3人の下忍が先導を終えて戻ってきた。
「秀吉軍が百地の国境を越えました。この辺りではまともに戦えるものはいません。逃げてきたもの話では砦に集結していた伊賀軍3千のうち半分が山に逃げ込んだと言っています。織田軍は忍者を見分けることができないので皆殺しをしているそうです」
「どこか応援はなかったのか?」
「孤立無援と聞いています」
 慎吾はどうしてこんな道を選んだのだろうか。
 裏街道を藤林の国境まで出た。逃げている最後の一団を見送って下忍6人とともに隠し道に入る。この道は抜け忍村にしかたどり着かない。山の中腹から煙の上がっている藤林の館辺りを見る。伊賀は滅んでしまったのか。




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伊賀攻め8
 伊賀攻めがついに始まった。利休は安全な岐阜に残ることとなった。茉緒は秀吉に頼み込んで隊の先導に組み入れてもらった。下忍の一人を途中で抜け忍村に文を持たせて走らせた。いよいよ新しい村に全員移動させて洞窟を塞ぐ準備にかかるのだ。
 秀吉の軍は百地館を落し伊賀に侵攻する。あちらこちらから夜討ちをかけられる。百地では2百ほどしか残っておらず鉄砲隊が討ち取っているのは農夫ばかりだ。
 秀吉は軍を止めてそこから侵攻しない。柵を築いて逃げ出てくるのを討ち取る気なのだろうか。茉緒は秀吉の陣幕に身を潜める。次々と野盗らしきものが戻ってくる。
「筒井順慶の軍が伊賀に入りました」
「信長さまもすでに」
「百地のお館の砦を焼き落としました」
「茉緒幕に隠れておらず顔を出せ」
 急に秀吉が声をかける。
「伊賀は終わりだな」
 やはり。こんなにももろい。
「儂は農夫をまで殺したくない。だが信長さまはそれは許さないわ。この先の向こうに忍者の裏街道があるだろう。そこから藤林を抜けて奈良に抜けられる」
 口だけ動かして、
「藤林の館も燃やす。そうしないと茉緒が睨まれる」
「いいのですか?」
「独り言さ」 
 茉緒はそのまま残りの下忍をまとめて裏街道を走る。

 














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伊賀攻め7
 伊賀は無法地帯と化したと噂が流れてくる。荷隊が伊賀に入ることはないという。岐阜に着くとわざわざ千利休を秀吉が迎えに出た。茉緒は利休の隊として城内に留め置かれた。宗久曰く利休の茶器は鉄砲の何百倍の価値があるという。部屋で休んでいると茉緒も夕餉に呼ばれた。
「魔王着物も似合うぞ」
 珍しく信長から声がかかった。
「私は堺の薬問屋の女将です」
「そうか薬は任せよう」
 秀吉が小声で何か伝えている。
「いつ出発できる?」
「明日朝には」
 伊賀攻めだ。茉緒は口が読めるのだ。
「筒井は?」
「5千を出します」
「総勢は?」
「4万を四方から」
「儂は鉄砲隊を2千を指揮して」
 信長自身が出る。伊賀忍は信長の恐ろしさを知らない。利休もこの話を聞きながら笑っている。忍者が生きる時代は終わるのだろうか。なぜ慎吾も凛も分かってくれないのだろうか。











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Author:yumebito86864
夢人です。『夢追い旅』『ぽろんの女』『空白』『刺青』と書き続けてきましたが、すべて古いノートから書き起したものです。今回は初めて時代物でこれは私の夢の中で永い時間をかけて育ったものです。



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