復讐の芽 ***藤林長門守*** 大海へ3
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復讐の芽 ***藤林長門守***
大海へ3
 杖を突いて歩く練習を始めた。最初はリーがずっとついていたが今日は堺に出かけている。茉緒はしたためておいた手紙を筒に入れて短刀をさして尾根道を歩く。時々振り返って見るが付けられている様子はない。この道は大勢が通った跡はない。
 炭焼き小屋が1刻歩いた時に見えた。草むらに半刻身を潜める。中に人の気配はない。しばらくして年寄りが猪を背負って小屋の前に立つ。やはり仕掛けがある。茉緒は息を凝らせて部屋に入る年寄りの首に刃物を突き立てて戸を閉める。
「港は?」
「茉緒殿?」
 やはり唇で伝わった。
「生きておられた?」
「凛たちは?」
「30人を連れられて港に逃げられました。儂が尾根道から下に降りて戦いの後を調べました。服部と抜け忍村の下忍の死体の他は見つかりませんでした。今も時々覗いてみますがもう死体もありません」
「凛は?」
「堺に出かけられています。徳川になって堺の体制も大きく変わったようです。凛さまは今は茉緒さまに扮装されています。生きておられたのを知れば凛さまは喜ばれます」
「源爺は?」
「抜け忍村に籠らているとか」
 源爺も凛も約束を守っている。
「獅子鍋を食べて行かれますか?」
「いや手紙を渡してくれ」







 
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テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

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Author:yumebito86864
夢人です。『夢追い旅』『ぽろんの女』『空白』『刺青』と書き続けてきましたが、すべて古いノートから書き起したものです。今回は初めて時代物でこれは私の夢の中で永い時間をかけて育ったものです。



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