復讐の芽 ***藤林長門守*** 2016年11月
復讐の芽 ***藤林長門守***
騒乱8
 夕刻抜け忍村から3人が着いた。慎吾が来て3人の訓練をしてくれている。この年寄りは源爺の腹心で剣の腕は抜け忍村では道場主に次いでできる。女忍の一人は始めの5人組の一人で毒使いだ。茉緒は凛からの繋ぎの手紙を読んでいる。
『・・・姉さんが堺を出てから三好長慶の死が伝わってきました。病死という報告ですが、どうも長慶の死とともに可愛がっていた娘が消えました・・・』
 やはり弾正のあの修験者の女だ。
『・・・前から体調が悪いという噂なので疑われてませんが、実は最近弾正のところに小姓が来たのです。あの修験者の女にそっくりなのです。夜弾正に抱かれていたのですが男です…』
 弾正は今回の暗殺はずいぶん前から準備していたようだ。各地に果心居士を含めた修験者が送り込まれている。
『・・それが三好一族が弾正に付くものも出て足並みが揃いません。これからは弾正さまの指示ですが筒井順慶を探ってほしいとのことです』
「どうした?」
 慎吾が黙っている茉緒に声をかけてくる。
「三好長慶が暗殺されたのです」
「やはり松永?」
「はい。六角はまた京へ?」
「それはないだろう。あの場で3百を失い、赤松と戦が始まっている」
「筒井順慶はご存知ですか?」
「前の家で仕事を請け負っていた。藤林の小頭になったと報告に行こう。殺すわけではないな?」
「抱かれるかも?」





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騒乱7
 松永弾正は堺に戻ると素早く三好の館に入る。ここを明け渡す約束も取っていたのだ。茉緒は弾正の小姓としてすべての手配を終え弾正を迎えた。夜伽を凛に任せて女忍を連れて藤林の館に走る。途中女忍に源爺への手紙を持たせて抜け忍村に走らせる。茉緒はすぐさま藤林の館に潜り込む。
「茉緒は凄い働きだったそうな?」
 迎えた慎吾が声を発せず伝えて笑う。藤林の忍軍もすでに戻ってきたようだ。妹御が膳を運んできて座る。
「藤林も手柄を立てお頭も機嫌が良い。だが天下取りからは六角は外れた」
「弾正は堺の三好の屋敷に住みつきました」
「小頭は愛人の男に殺されたことで私が小頭になった」
「いよいよ段取りを」
「こちらも私の周りに信頼置けるものを集めている。前の小頭の部下は六角詰めにする」
「2日後に抜け忍村から女忍2人と年寄りを親族ということで雇い入れてもらいたいのです」
「それなら私の親族が良い。お頭が身内を呼べと言っている」
 妹御が紙に名前を書いて見せる。
「すでに前の家の忍者を私の部下に3人入れている」
 慎吾も着々と準備している。
 話が着くと茉緒が帰るのを慎吾が追ってきて隠れ家に入る。凛には悪いが弾正に抱かれるより慎吾に抱かれる方が良い。






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騒乱6
 空が薄明るくなってくる。弾正が合図を送る。一斉に矢が放たれる。六角と赤松の兵が背中から狙われてバタバタと倒れる。街道の三好軍が釣られるように街道を突撃し始める。
「待機するといったはずなのに」
「いや松永軍に戦果を奪われたくないのだ。それが取り巻きが長慶を引きずっていく」
 弾正はこうなることを読んでいる。その時凛の繋ぎが走って来る。
「藤林が街道の向こう側にいます。火薬の臭いがします。応戦しますか?」
「手を出すな」
 弾正の目が鋭い光を放っている。すでに三好との戦いは始まっているのだ。
「裏道の手配をするように」
 茉緒は命を伝えると街道を見つめる。早くも藤林得意の火薬玉が飛ぶ。六角赤松軍がなだれ落ちてくる。三好軍はここで2百3百は兵を失う。弾正は天下取りを狙っている。しばらく付いていこうと行こうと茉緒も思っている。だがそのためには父の藤林を取り戻す。
「足の速い忍者にこの手紙を持たせて堺に走らせよ」
 これは長慶に書かせた手紙だ。
「これは私が届けまする。忍軍は探索に置いていきます」
「堺に着いたら夜を楽しみにしているぞ」
 弾正は凛しか抱いていない。そう言うともう丘を下り始めている。茉緒も走りだしている。









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騒乱5
 夜に茉緒は弾正から指示があって忍軍を連れて六角の陣地の探索を命じられた。もちろんすでに指示を出していた。茉緒と入れ替わった凛が下忍を連れて出発している。
 茉緒は遅れて小姓に化けて弾正の傍にいる。弾正の兵は三好の兵についていく形で夜の街道を走る。時々凛からの伝令が来る。どうも六角も忍者から三好松永連合軍が動いたという情報を得て、北から動き出したということだ。それから2刻して次の繋ぎがきた。どうも小高い丘の中腹に陣を敷いたという。街道に弓を打ち込むつもりだ。
「弾正さま。敵は気付いてここに陣を敷いたということです」
「どうすればいい?」
「三好軍にはこの手前で陣を敷くように。松永軍はここから丘の上に出て」
「面白い。一緒に来い」
 弾正は馬を走らせると長慶の馬と並ぶ。そして茉緒に同じ説明をさせる。ここで弾正軍は別れ道を曲がり馬を置いて前を走る忍者を追いかける。これは凛が送ってきた下忍だ。1刻山を駆け上がると凛が近づいてきた。
「この下に陣が敷かれている。六角と赤松の混合群だから指揮系統が良くないわ」
「藤林は?」
「それが気配がないのよ」
「頭と50人が来てるのよ。もしかして街道に火薬を仕掛けているとか?」
「もう少し調べてみる」
 弾正の兵がすでに弓を構えている。
「もう少しで日が出てきます。それを合図に。でも深追いは危険です」
「ああ、追い返せばよい」







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騒乱4
 今井宗久の茶室に三好長慶と松永弾正が入って来る。弾正には凛が長慶にはやはり娘が付いている。弾正が下手で茶を煎じて長慶に回す。茉緒は屋根裏にいる。
「そちらも報告を受けられたと思いまするが、六角と赤松は密談を交わしていまする。長慶さまが依頼された1千に対して3千の兵が京に入っています。三好軍は3千、当方は2千」
「うむ。娘達を下がらせてくれぬか?」
 その声で2人は立ち上がる。茉緒はうむと思った。長慶の傍にいる娘は果心居士の修験者の中にいた女だ。
「長い付き合いの私と度々争っている六角とどちらを信じまする」
「お主を信じていないわけではない。取り巻きに嫌われすぎているのだ」
「なら京を離れ堺に住まいを移しまする」
 長慶は四国に近い堺なら弾正を押さえやすいと踏んだ。
「兵は出すか?」
「もちろん。指揮も委ねまする」
「明日の夜半出発出来るか?」
 どうも和解したようだ。ともに六角を打つ。
「六角と赤松を追い払ったら、兵を解散して堺に向かいます」
「その折には手紙をしたためよう。堺の取り締まりを任せるとな」




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騒乱3
 今井宗久の商隊が京に着いた頃は町は兵で溢れている。三好の兵と弾正の兵が睨み合っているが、まだ刀を交えていない。北には六角の兵が陣取っている。だが六角の兵の中に相当数の赤松の兵が混じっている。これを三好長慶は訝って逆に何度か松永弾正と話をしている。
 茉緒は六角、三好に間諜を入れている。京に来てから今井の京店に親戚の娘として泊まっている。夜になると茉緒と凛は同じ床にいる。
「どうも六角は赤松と組んで京を制圧する」
「将軍にも話を付けている」
 この話は弾正にも報告済だ。おそらく三好も百地から同じ情報を入れているはずだ。
「修験者は?」
「各地に散っている。果心居士の行方が分かりません」
「凛は何度弾正に抱かれた?」
「もう5本の指では足りないよ」
「何を考えている?」
「弾正は毒を使うつもりよ」
「誰に?」
「分からないけど、各地に修験者を派遣している」
 弾正はここで消えるのか生き残るのか。今井宗久は弾正に賭けている。茉緒も賭けれるのか。
「今日も弾正は三好長慶に会うのだな?」
 













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騒乱2
「先頭は凛がこの地図通りに走るの」
と言って朝一番に早掛けの弾正の隊が走り出す。弾正の籠は同じ重さの布にくるんだ石を積んでいる。茉緒たちは遠巻きに走り出す。百地も連れれるように走り出す。茉緒が百地が動いたのを確認して鳩を放す。同時に弾正の500人の軍団が城を出る。だが茉緒も一番早い下忍2人に軍団を追わせている。
 弾正とは騙し合いのところがある。彼は策士の塊だ。休みも取らずに2刻は走っている。茉緒は先回りして偽の軍団を山に隠して足跡を消して忍軍に街道を走らせる。百地はやはり引っ張られるように追いかけてくる。何度か道を曲がって山の麓を一回りしている。もう続けて更に2刻走っている。
 凛から狼煙が上がる。茉緒の忍軍は草むらに姿を消す。続いて休憩した元の軍団が百地に見えるように動き出す。先頭は凛だ。これから最後の窪地に向かう。ここには裏道がある。茉緒は窪地を取り巻いて待っている。更に1刻軍団が窪地に入ってきてそのまま籠を放り出すと裏道に消える。
 百地の忍軍が相当疲れた足で窪地に入ってくる。茉緒は手を上げる。忍軍から目つぶし入りの火薬玉が投げ込まれる。不必要に殺し合いをする必要はない。茉緒たちも草むらを走っていく。
 最初の忍者が戻ってきた。
「やはり京へ走ったか?」
「はい。途中で豪族が参入して2千の兵になっています」
「予定の行動だったのですね」
「実はもう一つ頼まれています。これから堺に行きます。今井宗久の荷を京に運ぶのです。鉄砲と火薬です」






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騒乱1
 凛から繋ぎがあり大和の松永弾正の城に行く。この頃はまだあの天守閣はできていない。茉緒は5人を連れて尾根道を走る。情報によれば三好と弾正は一発触発のところにあるらしい。百地の忍者が山を取り巻いている。すでに近隣の豪族が数日前に攻め寄せてきた。
 茉緒は弾正の屋敷の屋根裏に忍び込む。しばらく凛と茉緒は同一人物で行こうと考えている。閨に弾正と絡んでいる女がいる。凛だ!彼女は茉緒と同じように尻を上げて抱え組むように抱く。後ろの穴を使っている。半刻ほど続いて凛が離れる。
「どう?上から見て」
 口を動かすだけで闇から凛の声がする。
「今弾正は京から下がって謹慎という形を取っているわ。長慶はまだ踏み切れないようで取り巻きが積極的に動いている」
「それでおとなしくしているだけ?」
「果心居士の部下の修験者を各地に送っている」
「果心居士は?」
「京に行った」
 弾正が手を叩いて今度は茉緒が降りる。
「応援がきたか?」
「11人が動かせまする」
「百地を引き付けて1日ほど引き回してもらいたい。こちらから足の速い足軽を侍に50人見立てる」
「囮ですね?」
「相手を殺す必要はない。引きつければ逃げて帰るとよい」












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伊賀の統一12
 服部保長が100人の忍軍を率いて京の百地の隠れ家を襲った。この襲撃で百地の京の忍者が30人失われた。藤林がそれに代わり六角の依頼で再び50人を京に出すことになった。珍しく頭が忍軍を率いる。小頭は前回足を切られたので屋敷に残る。慎吾は松永弾正の調査に出かける。
 茉緒は慎吾から小頭の愛人の家を教えられている。早いうちから愛人の家の屋根裏に潜み、愛人を観察していたがふと思いついて彼女と入れ替わる。化粧を施せば体型はあまり変わらない。これから部屋を薄暗くして半裸で蒲団の中で背中を見せて横になる。
 小頭がそっと戸を開けて入ってくる。裸を見てもう裾をまくっている。茉緒は両足を上げて小頭の体を抱き込む。小頭のものが膨らんだまま茉緒の中で締め付けられ悶絶した。茉緒は起き上がると小頭を全裸にして皮で縛って水をかける。
「どうだ耐えれるか?」
「何者だ?」
 紫色になった指を切り落とした。
「これから言うことに答えなさい。15年前当時の小頭が藤林のお館を殺したのですね?」
「殺したのは奥方だ。小頭は奥方に誘われた」
「どうして奥方はお館を殺した?」
「奥方は性奴だった。それでお館は離縁を考えていた。それを奥方は知って逆襲した」
「今のお館が小頭と知っているのは?」
「私だけだ」
 その声と同時に首の骨を折った。








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伊賀の統一11
 夜にまた小川の岩の前に来た。その時そっと影が動いた。茉緒は刀に手をかけた。影はついてこいとばかりに小川の道を走り抜け古ぼけた神社の中に入る。そして床下を剥がすと階段を下りて行く。
「ここは藤林を見張るために使ってきた。今は同志の会合の場だ。今日は屋敷に入るのは不味い。六角家の京での仕事を終えて荒れている」
「なぜ荒れる?」
「六角家が京に攻め上がる。だがこれは三好との裏の連携がある。三好には百地が付いている。それで安心して将軍家を襲ったのだ。だが柳生の軍団に襲われて30人のうち半分が切られた」
「慎吾も?」
「ああ強い」
 足利将軍の警護を依頼したのは松永弾正だ。そのために身が危険になるのに果心居士を送った。三好は百地を使って弾正を襲い、六角は藤林を使い同時に将軍を襲った。
「手を結びたいの?」
「聞きました。このままでは藤林も危ない。どうする?」
「私に考えがある」
 茉緒はそれ以上話をさせず、慎吾を抱きかかえた。茉緒はくの一として体を預けてきた。だが慎吾とは快楽で抱かれている。凛を抱くと心の安らぎに向かう。慎吾とは燃えた火を鎮められない。これが恋というものだろうか。慎吾のものを口で大きくして後ろに誘い込む。





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プロフィール

yumebito86864

Author:yumebito86864
夢人です。『夢追い旅』『ぽろんの女』『空白』『刺青』と書き続けてきましたが、すべて古いノートから書き起したものです。今回は初めて時代物でこれは私の夢の中で永い時間をかけて育ったものです。



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