復讐の芽 ***藤林長門守*** 2016年10月
復讐の芽 ***藤林長門守***
抜け忍村6
 最初の荷はお頭の源爺が商人と会って取り決めを行い5人を連れて堺に出発した。茉緒は抜け忍村の登り口の神社に結界を張った。柘植の忍者が10人ほど入ったと報告があったのだ。どうも抜け忍村が柘植との繋がりを切ったということを知られたようだ。この神社の賽銭箱に指示が来るが取り合っていない。
 下忍を5人張り付けて2日山に潜む。ようやく2人3人と神社に集まってくる。夕方には茉緒が見たことのある男の顔を見た。その時には聞いていた10人が揃った。まやかしの道に入るようだ。これからまやかしの道に戻って戦うべきか悩んだ。だがそれには時間がない。まず弓を持って攻撃だ。
 合図を送って最初の弓を弾く。残念ながら2人しか倒せない。引き上げてまやかしの道入り口で陣を張る。ここで双方弓の戦いだ。だがこちらは2人が傷ついて分が悪い。
 その時神社側から弓が一斉に放たれて柘植は総崩れとなる。5人ほどが打ち取られて逃げていく。茉緒は手勢を押さえて草むらに潜んでいる。
「話し合いがしたい!」 
 藤林の慎吾の声だ。仲間を残し一人神社に降りていく。神社には覆面を取った慎吾の顔がある。
「柘植と手切れをしたのだな?」
「・・・」
「それならこちらに力を貸してほしい」
「伊賀とは係らないことに」
「そうだろうな。堺の商人と商いがしたいのだ。藤林の火薬ではもう古いのだ。それとお館を暴きたい」
「分かった」













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抜け忍村5
 源蔵の女は爆発音を聞くとものの簡単に押し被さっている以蔵の首を掻き切った。それから装束を付けると洞窟に向けて走り出す。見張っていたのは凛と女忍で立ち会う余裕もなかった。笛を鳴らして後ろを走る。山道から駆け下りてきた年寄りが切り払われる。
 女が駆け上がってくると茉緒が剣を構えて立っている。
「男は殺したわ」
「あんたがそんなに強いとは思わなかった」
と言うなり剣を突き出してきた。この女も手練れだ。だがそのうちの笛の音で忍者が集まってきた。何度か剣をよけて急に体を沈めた。この技は?女の目が泳いだように見えた。体が下から切り上げている。そのまま女はどさりと倒れた。
 夜母屋に人が集められ茉緒の報告の後、茉緒の推薦で源爺が再びお頭となった。当然に茉緒が小頭となった。
「これは私の提案ですが、どうも柘植との付き合いは抜け忍村にはよくないと思うのです」
 日頃思っていることを口にする。
「なら稼ぎはどうするのだ?」
 この男は以蔵についていた男だ。だがここで反対を口にはできない。
「今回堺まで行って奈良とを結ぶ豪商に会いました。ここの護衛をしてみようかと思うのです」
 さっそく5日後に5人を手配されている。ただ守るだけではなく、同業者の調査の探索もある。今伊賀の内紛に会いを入れては滅亡する。抜け忍に合った仕事をやることだ。
「よし小頭の意見に従おう」
 源爺が昔の頭らしく威厳を持って決めた。





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抜け忍村4
 一日中小屋にいて剣の手入れをする。頭の中ではどうしても柳生の兄の剣を見切れない。
「どうも強引に柳生の兄に下忍を連れて柘植に行かせるそうだ」
 源爺が昼過ぎに野良着姿で戻ってくる。
「小頭決定より先に形を作ろうという腹ですわ。だが抜け忍村から出すわけには」
「夜に決行だな」
 2刻半眠って起きるとすでに源爺の姿がない。茉緒は黒装束に着替えると約束の抜け忍村の崖の前に来る。合図の笛が鳴る。草むらから源爺が顔を出す。その後ろを付いていくと崖を降りてくる柳生の男が見える。
「彼は裏山からの出口を探っている。だがこの山は深い」
 口だけを動かす。茉緒はすでに背中の刀を抜いている。崖を降り切るまでに襲おう。走り出すと一振りを入れる。だが男は崖から跳ねるように躱す。さすがだ。
「茉緒だな?」
「・・・」
「俺は確かに裏柳生だ。服部にとってお前らは目障りなのだ。以蔵も動きすぎた」
 ほとんど同時に上段から剣風が走る。辛うじて躱すと後ろに下がる。背中に崖が迫っている。続いて鋭い鋭い突きが繰り出される。その時空を目つぶしが飛んでくるのを見た。思い切り転がると切り抜けた。柳生の男は構えたまま体ごと爆発した。
「茉緒洞窟に急げ!」
 源爺の声を後ろで聞いて林の中を抜けていく。
 女が逃げる!








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抜け忍村3
 奈良宿で凛たちと出会った。女忍と入れ替わり凛とひたすら夜の道を走る。走りながら凛から詳しいことを聞く。
「そっと戻るのよ」
「でも村に入るとばれるよ」
「源爺のところに泊まる。やはりあの男は裏柳生だわ。服部から依頼を受けているかもしれない」
 洞窟まで戻ると源爺が小屋に招き入れた。
「今日も以蔵は主だった忍者を集めて柳生の男と打ち合わせをしている。ここにこちらの人間も入れている。今更以蔵を説得するのは無理だ」
 源爺は和紙を出してくる。
「現在では以蔵とこちらでは半々だ。だが積極的に以蔵を支持しているのは5人ほどだろう。今回魁の女房を殺したのは女忍をすべて敵に回したものだ」
「凛は明日一番に戻って私がまた名張に出かけたと言って」
「まず柳生の兄を消すわ」
「女を見張っておくのよ」
「よし、夜に探索に出た時を狙おう」
 源爺はずっと張り付いているのだ。
 おそらく手ごわい相手になるだろう。だが抜け忍村には彼にかなうものがいない。茉緒は日に日に伸びる剣の伸びを信じようと思った。
「私も加勢する」
「だめよ。思いっきり刀が振るえないわ」









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抜け忍村2
 女は忍者なのだろう。凛から報告があった。今は女忍を2人常時張り付けているということだ。茉緒も密かに柳生の男を見張っている。やはり村中を歩き回っている。それで何人かの下忍を抱き込んでいる。茉緒はその名前を書きだしている。片目の以蔵はますます女に溺れている。
 最近はほとんど以蔵は怪我を理由に仕事は茉緒に任せきりだ。今日も朝早くから下忍を3人連れて奈良の商人を訪ねる。これは源爺の時代から続いている荷の警備で堺まで行く。この時代は盗賊に襲われることが多いのだ。
 凛は畑仕事を終えると女の監視を代わる。時々柳生の男の小屋で女が抱かれているという報告も受け取っている。凛が代わった時は女は以蔵の部屋から出てきて抱かれた体を風呂で流している。
「誰か!」
 女中の声が響いた。凛が風呂場に入った時、鮮血が辺りに飛び散っていた。全裸の女が刀を手に湯船に立っている。その床に以蔵の女房が息を絶えている。やはり女は忍者だった。いち早く飛び出してきた以蔵が入り口の隠れていた母親を見物人の集まっていた中一刀に切り倒した。これで魁の一族は消えた。
 その夜急にお頭の片目の以蔵が小頭に柳生の兄を押した。これについては反対が多く茉緒が戻ってからということになった。その夜半柳生の兄と源爺との切り合いがあった。男が洞窟を抜けようとしたのだ。源爺は得意の目つぶしを投げて切りかかるが足を払われた。だが咄嗟に侵入者の合図の笛を吹いた。
 たちまちに凛たちが集まってくる。男はすぐに姿を消した。
「私が姉さんを呼んでくるわ」
 凛と女忍がそのまま旅立つことになった。






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抜け忍村1
「どうしたの?」
 またうなされて目が覚める。最近は猛火の中の夢を見る。急に襖があいて煙とともに黒い影が入ってくる。影は茉緒を抱えると床の中に潜る。あの床の中に洞穴が掘られている。横腹からねっとりと血が流れている。穴倉を抜けると小川に出る。
「また夢を見た」
 コツコツと戸を叩く音がする。まだ夜は明けていない。茉緒と凛は目を配って剣を握ると戸に手をかける。源爺が珍しく覆面姿で現れる。
「どうしたのですか?」
「あの柳生の兄の正体が分かったのだ」
 凛は源爺に水をくむ。
「もう15年前だがな、藤林の大火の探索を頼まれた。その時に奴が塀を飛び越えるところに出くわした。一刀を浴びせられたがあれは柳生の剣だった」
「裏柳生?」
「服部の依頼を受けて抜け忍村を調べに来た。服部は抜け忍村を消したいと考えているわ。片目の以蔵も馬鹿な男だ。彼らを出すと抜け忍村はなくなる」
 最近は茉緒を中心にわっぱ組が出来て、男女合わせて11人の仲間がいる。
「凛はあの女を見張らせるんだ」
「男は私が見張ろう」






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混沌12
 夜明け前に藤林に着いた。凛に逃げ道を作らせて慣れた屋根裏に潜む。奥方の部屋の上に屈む。まさに奥方が全裸で男に跨っている。男の枕元に頭巾が脱ぎ捨てられていて、醜い皮が置かれている。男の顔が天井を向いている。これは父の顔ではない。
 体を起こそうとすると首に刀を充てられている。
「あの女忍か?」
 口だけを動かす。
「私の前を歩くのだ。その明りの中に降りるんだ」
 この体勢では一瞬に首を切り落される。言われるままに明りの中に飛び降りる。降りるとそこにはあの時の妹御が小刀を構えている。男は飛び降りてくると茉緒の覆面を剥いだ。
「まあ兄によく似ている」
「あそこにいるのは藤林のお館ではないのですね?」
「そうだ」
「なら奥方は?」
「本人です」
 その答えと同時に廊下が慌ただしくなった。
「床から逃げなさい」
「また会いに来ます」
 床に潜ると凛の目印の裏木戸を抜けて林の中をひたすら走る。次の目印で跳び上がると後ろから来た忍者が撒き菱で転げまわる。





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混沌11
 片目の以蔵は戻ってから肩の傷から熱が出て母屋に籠っている。この最中に以蔵が引き込んだ女が兄という男を抜け忍村に引き込んだ。
「その男は?」
「お頭と同じくらいかな?どうしても兄とは思えないよ」
 凛が首を傾げている。
「抜け忍か?」
「あれは武芸者のような気がする。本人はお頭に柳生にいたと言ってるらいけど。調べてみようか?」
「それより藤林に付き合ってくれない?」
「また仕事?」
「いや個人ごとだよ。あの戦いで藤林の妹と会ったのよ」
「それで調べてみる?」
 凛には茉緒は自分が藤林の息子ではないかと話している。
「これから源爺に会ってからそのまま立とう」
 源爺の小屋に着くと珍しく洞窟の中にいる。仕方なく敷居に腰かけていると、凛が源爺が描いた似顔絵を見つける。
「これその兄の似顔絵よ」
「そうや。昨夜母屋に忍び込んで描いたのさ。どこかで会ったやつだが思い出さないわ。これから仕事かい?」
「藤林に潜り込む」
「気を付けろや。戦の後だからな」












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混沌10
 未明に片目の以蔵は下忍を10人集めて服部と藤林の国境に集結した。ここに茉緒も入っていて頭の横に詰めた。どうも服部が藤林の身内の豪族を攻めるようだ。街道口からは服部が50人、裏口から柘植が20人、尾根伝いに抜け忍村という配置だ。急襲だから藤林の館から兵は来ない。
 報告ではこの館には今は30人ほどしかいない。元々ここは中間派の豪族であったものが藤林の妹を貰ったので藤林側となった。服部としては奈良、堺への街道となる要の土地だ。
 合図の元に一斉3か所から攻撃を始めた。こうなると力対力だ。抜け忍が尾根口から屋敷に着いた頃は戦闘の最中ですぐに藤林の豪族のお館の首を取ったという合図が聞えた。尾根口から裏庭に入り込むと女人が娘の手を繋いで出てくる。だがその後ろに若武者が出てきた。あっという間に下忍が2人切り払われた。片目の以蔵も見事に肩を切られて倒れ込む。茉緒は刀を抜いてその若武者の一撃を躱す。相手は驚いたようにこちらを見ている。
「その方は藤林の妹御ですか?」
「貴様は女か?」
「通り抜けてください」
「私は慎吾」
「私は茉緒と言います」
 茉緒は頭を下げると裏庭に煙幕を投げた。それから気絶している片目の以蔵を起こして館の中に入る。
 結局1刻の乱闘で抜け忍村は4人の下忍を失った。服部は12人、柘植は7人と死者を出した。この後ここには服部の一族が入ることになる。そこまで追従しないと生き残れないのかと茉緒は思った。



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混沌9
 お頭の片目の以蔵は戻ってきたが小頭のすばしりは行方不明だ。片目の以蔵は一人の女を連れてきて魁の娘を追い出した。小頭不在のまま茉緒が下忍を5人まとめて名張の庄屋に頼まれて女人をさらった盗賊を襲う仕事を受けた。本来魁の時代はこれが本業だったのである。
 街道を抜けて盗賊のねぐらの屋敷を取り囲んだ。凛が庄屋の女中として下忍を2人農夫として米を運ぶ。茉緒と下忍は屋敷の屋根に上がり屋根裏から部屋を見て回る。盗賊は7人、娘は女中も入れて3人。打ち合わせ通り運び入れた酒に茉緒が作った眠り薬を入れた。
 屋根裏から部屋の中を覗く。3人の女は昨夜から回されていて股から血の匂いがする。こういうことはよくあることでそれで自殺することもない。盗賊の頭は動きから抜け忍と見られる。余程酔いが回るまでは危険だ。女を抱いていた男達が一人ずつ眠っていく。茉緒が合図の忍び笛を吹く。天井、入口、裏口から一斉に飛び込む。
「忍者か!」
 盗賊の頭が刀を抜いて天上から飛び込んだ下忍の肩を払う。すかさず茉緒の剣がその右腕を切り落とす。だが男は押し倒して来る。その背中を凛が力一杯に突き刺す。
「凛手柄だ!」
 それぞれの部屋から縛られた盗賊が集められる。凛は女たちを洗い清めてやる。下忍が庄屋に連絡を入れる。庄屋から手当てを貰うと盗り方に引き渡して引き上げだ。元々抜け忍が忍者と組むのには無理があるのだ。片目の以蔵は柘植と密約があるのだ。





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yumebito86864

Author:yumebito86864
夢人です。『夢追い旅』『ぽろんの女』『空白』『刺青』と書き続けてきましたが、すべて古いノートから書き起したものです。今回は初めて時代物でこれは私の夢の中で永い時間をかけて育ったものです。



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