復讐の芽 ***藤林長門守*** 歴史小説
復讐の芽 ***藤林長門守***
変遷3
 紀州の港に始めて南蛮船が入った。
「港の掘り下げは終わったらしいな」
「2隻同時も問題なしです」
 今回は堺から鉄砲や火薬と南蛮からの大筒を下した。
「大筒は岬に取り付ける。南蛮船の修理はどのくらいかかる?」
「10日あれば」
「船長の話を聞きたい」
 彼は宗久から廻船の船長として紹介され南蛮船に乗るようになった。
「今回はアユタヤという街に船を泊めてたのです」
「アユタヤ?」
「日本人がたくさん住んでます。小頭が古い屋敷に問屋を開いて拠点にしています」
「小頭にその屋敷を買い取り百人ほど住めるように伝えてくれ」
「やはり?」
「思ったより早くなる。船長も後1人育ててくれ。私もそのアユタヤに行きたい」
「行きましょう」
「まだ片付けることがある。銀はまだ売れるか?」
「まだまだいけます」















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変遷2
 秀吉が亡くなって朝鮮からの引き上げで国中が混乱している。国替えになっていた家康が江戸に町を作っている。源爺が薬売りのラインを江戸まで広げた。服部も本体は江戸に移っている。今は国に二つの中心が出来たようだ。茉緒は大海から戻ってきた南蛮船の荷を下ろして堺から下った港に入れる。新しい南蛮船がすでに入っていて銀を積み込んでいる。
 宗久の屋敷の蔵に買い取ってきた金を運び込む。今や宗久は利休亡き後影の堺の大豪商だ。宗久は主な問屋10軒ほど束ねている。
「いよいよ海商だな」
「宗久さまは江戸に店を構えられたとか?」
「これからは江戸だ。茉緒の店も探しておこう」
 茉緒の廻船も堺と江戸を2隻が往復している。宗久も何度か江戸に出向いているようだ。
「やはり明智殿が生きてるわ。会ってはいないがあの町作りは間違いない」
「茶々さまは旨く利用されたのですね」
「だが三成は敵が多過ぎるわ。彼は頭ですべて解決しようとする。彼の力は太閤さまあっての力だ」
「また戦ですか?」
「戦はすでに始まっているわ」
「金はどこに?」
「しばらくは江戸が吸い上げる。その資金で全国の鉱山を押さえる。だが今回は表には立たぬ」
「どうしてですか?」
「家康は甘くない」





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変遷1
「いいところに戻られた」
 源爺が砦から迎えに出てきた。凛の部隊も砦に入る。これからここからの出撃になる。
「造船所の港まで道を整えた」
 源爺が新たに加えた地図を広げる。
「別れ道は手を施して見た目は消してしまった。いずれ服部が攻めてくるのを手当てしたわ。それと器用な男女の年寄りの10人を港の長屋に入れた」
「港はどうですか?」
「長屋は完成していたが、炊事場や風呂などは彼らに作らせる。海底を掘るのは難航していた。それで技術を伝授した。南蛮船は立派なものだなあ」
「出来上がっていましたか?」
「ああ、堺に出て荷を積んだら航海に出ると」
「いずれみんなで海を渡る日が来るだろう」
「近いですかな?」
「思ったより近い。秀吉は命の火が消えそうだった。茶々や三成では家康の敵ではない。そうなれば闇は服部が支配することになる」
「抜け忍村は?」
「何とか守りたいものだ。抜け忍村と港と海をしっかり繋ぐことだ」
「ただ心配なのは途中にある修験場を調べたがここには3百ほどいるのが気にかかる。調べてみたがとくに村も襲われたこともないそうだ。それで入口に炭焼き小屋を建て年寄りを住まわせた」
「念には念だな」








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地に潜る12
 茉緒と凛は忍軍を連れて伏見城に忍ぶ。それは自害した利休からの宗久宛ての手紙を知らされたからだ。利休は茶々が秀吉に薬を盛っているという情報を書いていたからだ。この情報は家康にも漏れていたようだ。利休は親しい何人かに知らせていたようだ。
「伏見城に家康も登城して服部が忍んでいます」
「凛と二人で入るが他は逃げ道を手配するのだ」
 天井に潜るが人の気配がある。凛と茉緒が一人ずつ倒す。服部だ。微かに聞きなれた秀吉の力弱い声が聞える。秀吉が蒲団に寝かされていて、家康が覗き込むように座っている。隣の部屋に秀吉の警護の侍が10人ほどいる。服部の気配も至る所にある。長居は無用だ。
「秀頼を頼む」
 先程から同じ言葉を繰り返している。やはり毒を飲まされていたと言うのは嘘ではないようだ。そろりがいればこういう事態はなかっただろう。だが家康はこのチャンスを逃さないだろう。凛に合図を送った時に向こうの闇で剣がぶつかる音がする。まだそろりの部下がいたのだ。
 天井を抜けて石垣まで走る。同時に20人ほど忍者が飛び出してくる。そこにそろりの下忍が10人ほど飛び出してくる。闇の中では家康が勝っている。茉緒と凛は手前の下忍を倒すと用意された縄梯子に飛び上がる。仲間の下忍が短弓を浴びせる。
「いよいよ家康の世の中が来る」
「どうなるの?」
「偽の抜け忍村もお終いかな。このまま偽の抜け忍村まで走るぞ凛」





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地に潜る11
 朝鮮出兵が泥沼化している。大阪城はそれとは無関係に大阪の町に聳えている。秀吉の周りはいつの間にか様変わりしている。利休も昔ほどの力をなくしている。茉緒は材木問屋として相当な材木を大阪城に入れた。廻船を5隻をフル回転させた。今では堺では少し有名になりすぎた。もちろん表向きの主人は年老いた下忍だ。
「凛さまが2階に来られています」
 材木問屋では廻船の女船頭だ。
「姉さん女船頭も似合っていますね」
「伊賀はどうだ?」
「あれから服部の動きが止まっています。源爺は手紙を貰って下忍を5人連れて港までの道にもう半月入っています。今回は若手を半分入れて20人体制で来ました」
「何かあるのか?」
「それが息子の半蔵が50人連れて昨日堺に入ったようです」
「最近は半蔵が指揮を執ってるようだな?」
「ええ、鉄砲傷から一線を引いたと聞いています」
 まやかしの道での戦いを思い出した。茉緒が鉄砲を採りいれるのを決めた事件だ。
「今回は秀吉との家康の面談の警護だと言うことです」
「すでに畿内の服部が警護していると?」
「そうなんです。何か別の動きかと」
 今の秀吉は一枚岩ではなくなっている。それと朝鮮撤兵も堺の商人には話題に上っている。朝鮮出兵に加わらなかった家康の力はあなどり難いものになっている。
「久しぶりに泊まるか?」
 二人にはもうわだかまりはない。









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yumebito86864

Author:yumebito86864
夢人です。『夢追い旅』『ぽろんの女』『空白』『刺青』と書き続けてきましたが、すべて古いノートから書き起したものです。今回は初めて時代物でこれは私の夢の中で永い時間をかけて育ったものです。



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