復讐の芽 ***藤林長門守*** 歴史小説
復讐の芽 ***藤林長門守***
激動3
 本願寺の攻防が始まるが一進一退だ。今井宗久は依然堺では圧倒的な力を持っているが、反信長側に回らず最近は鉱山開発を始めている。
「どうだ?」
 薬屋の番頭の女忍が留守の間はすべてを取り仕切っている。
「荷隊は奈良堺間を2組、堺京都間を1組動いています。和歌山と本願寺の荷隊は断りました」
「宗久さまは?」
「何も申されません」
「薬売りは?」
「現在30人を」
「納屋衆の動きは?」
 今下忍は藤林にいた女忍が裏で取り仕切っている。
「納屋衆には5人を張りつかせています」
 調べ帳を広げる。5分5分というところか。
「とくに紅屋が反信長の筆頭です。本願寺とは相当太いパイプがあるようです。どうも後ろに忍者が盛んに動いています」
「利休さまより下忍を3人回すようにと」
「利休さまは?」
「なかなかの策士であられます。程よい関係でないと足を救われかねません。それと抜け忍村から繋ぎがあり、凛さまは片足を引きずられていますが意識を戻されたようです。ただ妊娠されているようです」
 慎吾の子を孕んだのだ。













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激動2
 茉緒が薬問屋の女主として荷隊を京に運んだ。二条城は兵で溢れている。
「秀吉さまは?」
「中でお待ちです」
 廊下を抜けて居間に入る。
「待っていた。鉄砲が届けば出陣だ」
 秀吉は鎧を着こんでる。
「本願寺ですか?」
「伊賀より酷いことになるわ。宗久は千艇は売り込んでいる。信長さまもご存知だ。宗久も終わりだのう。今後は茉緒が引き継ぐのだ」
 すでに宗久は悟っている。
「長島だけでなく今回は毛利も動く。それと伊賀の残党が本願寺に入ったという」
 慎吾が生きて?
「堺はどうなるのですか?」
「利休が取りまとめをしておる。堺の納屋衆は大きく変わることになろう。利休に茉緒のことは頼んである。これは利休からの納屋衆の調査だがもう少し詳しくな」
「はい」
「本願寺はそう簡単はいかんだろう。鉄砲の玉より信者が多い。だが和解交渉も続けている。これもまだまだ条件が整っていない。それには本願寺に付く納屋衆を排除する必要がある」
 それを調べ上げよということだ。秀吉は怖い。

 








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激動1
 凛が目覚めない。滝川軍もまやかしの森から引き揚げ信長本軍も伊賀を焼き尽くし去っていった。茉緒は荷隊を引き連れて堺に向かう。堺は伊賀とは係りなく何もかも繁栄を続けている。この頃から正式に薬問屋の女主人茉緒と名乗っている。
「ご無沙汰してます」
 今井宗久の屋敷を訪問する。
「藤林のお頭が亡くなったと聞いて心配していたのやが」
「しばらくそのようがいいと」
「そうだな。堺も今までのようにはいかん」
「信長が堺にも本願寺にも莫大な矢銭掛けてきいてる。堺を手に入れる気だ。利休は織田方についいている」
「宗久さまは?」
「睨まれいるからな」
 本願寺派にはかなりの鉄砲を流してる。秀吉も関係を薄めてきている。
「それでだ。今後鉄砲と火薬は織田には茉緒から納入する」
「本願寺とは?」
「伊賀ではまとまれなかったが矢銭ではぶつかることになるだろう。今井も深く入りすぎた」
 茉緒は戻ると京へ5百艇の鉄砲と火薬と薬を詰め込み指示した。現在堺には30人が詰めてる。伊賀が蘇るのは相当な時間がかかるだろう。藤林は生き残った。




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伊賀攻め13
 抜け忍村に戻ると知らせを受け急いで母屋に入った。片腕の源爺の妻が凛の左太ももに包帯を巻いている。
「左太ももに銃弾が入っていて抜いた。切り傷は深手も含めて7か所、まやかしの道に入って倒れていたのさ」
 源爺が妻の横に座る。
「かなりの高熱で意識が戻っていません」
 妻が補足する。
「百地の頭を切ったのだね?」
「生きてもらうと困りますから」
「そうだな。これからどうする?」
「荷隊を中心に。薬売りは奈良から堺まで。ところで洞窟を塞ぐ準備は?」
「塞いでも出口は奈良側に別に作ったさ。ここに地蔵堂を作った。森からの報告ではさらに5百が応援に入った。今から塞ぐ」
 今夜は母屋に泊まり凛の寝顔見て添い寝をする。あれからずっと慎吾に抱かれてきたのか。しばらく藤林のお館は死んだことにして薬問屋の主で通そう。
「抜け忍村に帰ろう」
 凛の譫言だ。慎吾と話しているのだろう。
 茉緒は凛の傍に添い寝する。
「もういいんだゆっくり眠れ」















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伊賀攻め12
 抜け忍村に戻り2日が経つ。滝川軍は峠を占領して3方に兵を分散した。とくにまやかしの道に繋がる森に見張りを5人出した。秀吉軍は予想通り藤林の館を燃やした後伊賀の中心地へ針路を変えた。陽が暮れた頃伝令が来た。
「こちら側の森で滝川軍3百が残党30人と激しい切り合いがありました」
「で残党は?」
「こちらで見ていた限り全滅したように」
「鉄砲隊20人を向かわせる」
 案内で戦闘近くまで来る。滝川軍の死体も多い。その時落ち葉の中から人影が立ち上がった。茉緒は剣を抜いて構えて鉄砲隊を押さえる。
「伊賀の残党か?」
「ああ」
「百地の小頭、いやお頭だな?」
 顔に見覚えがあった。
「どうしてみんなを引き込んだ?」
「朝廷と本願寺の意向だった」
「だが誰も助けを出さなかった」
と言ってそのまま茉緒は切り抜けた。
 お前は死ぬべきだ。








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yumebito86864

Author:yumebito86864
夢人です。『夢追い旅』『ぽろんの女』『空白』『刺青』と書き続けてきましたが、すべて古いノートから書き起したものです。今回は初めて時代物でこれは私の夢の中で永い時間をかけて育ったものです。



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