復讐の芽 ***藤林長門守***
復讐の芽 ***藤林長門守***
混沌4
 今回は幸作の救出はお頭の魁が出張ることになり、下忍7人を集めている。それより先に凛を入れ片目の以蔵が茉緒と下忍2人で先行して下調べする。翌日には三輪に着いたが、すでに幸作は藤林に連れられて行ったとのことだ。都度に伝令が送られる。ここで凛は伝令となって戻る。
 藤林の館には結界が張られている。小頭が屋敷から出てきた女中を捕らえて茉緒が変装して屋敷に潜る。小頭と下忍は逃げ道を作る。
 屋敷に入ると思ったよりピリピリとした雰囲気がない。番している2人が話声がする。
「あの下忍恐ろしく口が軽いな。爪を剥がすまでに喋った」
「明日は服部に送られるわ」
 どこまでしゃべったのだろうか。幸作が知っているのは柘植の依頼だと言うことだけだ。だが服部も送られてこられても困るだろう。これ以上は危険だ。引き返すと逃げ道が出来ている。峠の上の炭焼き小屋で小頭に報告する。小頭は聞くなり2人の下忍を走らせる。
「茉緒俺と組まないか?」
 迂闊に抱きに来ない。茉緒の背中には父の刀が背負われている。片目の以蔵はどうもとんでもないことを考えている。だが抜け忍が生きていくためには抜け忍村を離れられない。もう抜けるところがないのだ。軽く頷いた。すると蛇のように口を吸うと体の中に入ってくる。
「どうする?」
「明日伝令が戻って着次第教える」
 どうも柘植にも伝令を送ったようだ。柘植にとっても幸作が運ばれてくるのは問題だ。
 





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混沌3
 凛は猫の額のような畑を茉緒に任せて藤林と国境になる豪族の三輪を探っている。最近は身近なところは息子の幸作が出張る。今回は年配の下忍と3人で早くも夫婦役をいいことに凛を抱いている。三輪はここ最近藤林に接近しているという話だ。中立派の豪族から調査があった。
「明日三輪の館に忍び込む」
 3日目に得意のたらし込みで幸作が今日藤林の小頭が来ると言う情報を掴んだ。
「そこまでのことはいいのでは?」
「ここで名誉挽回だ」
 そう言われて朝方から館の床に潜んだ。耳は茉緒に負けず凛も得意だ。下忍は逃げ道を確保している。幸作はこんな時も凛の体に触れてくる。
「・・・」
 凛は口だけ開けて幸作に知らせる。二人が向かい合っている。
「藤林殿は今後どうなさるのか?」
「百地とは争わず服部と戦うとの館様の」
「それなら安心ですわ」
 三輪は百地一族とは国境が接しているが服部とは遠く離れている。
 次の瞬間畳を突き抜けて真剣が飛び込んでくる。凛の体はばね仕掛けのように床を走り抜けている。後ろに幸作の声がしている。走ることなら誰にも負けない。下忍が逃げ道を用意している。万が一の出会いの場に着くと下忍が崖の上から縄を投げてくる。
 幸作は館を出た時には凛の姿は見えなくなっている。手裏剣が背中に刺さる。途端に前のめりになり倒れる。剣術も走ることも苦手な幸作なのだ。
 崖を超えるとそのまま尾根伝いに走り続ける。伝令が先で助けることはないと教えられている。まやかしの道を抜けて母屋に着く頃には小頭も茉緒も揃っている。あの事件より小頭は茉緒を立てている。
「三輪に捕まったのか?」
「藤林の小頭と思えます」
「不味いな藤林は」














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混沌2
 小頭は繋ぎも取らず百地の国境の寺に身を潜める。茉緒が豪族の屋敷を探索する。3日3晩張り付いたがこの男は毎晩寺の稚児を訪ねて寺に潜む。表向きは妻をめとって子も3人いる。だから寺に気に入った稚児を囲っていて通っているようだ。この話をすると小頭は寺に潜んで襲撃を選んだ。
 茉緒は実は年々剣のさばきが自分の力ではない速さになっているのに気付いている。それで最近は父の剣を使うようになっている。重たくはないが妙に反りがあり思う方向に剣先を曲げることができる。だが凛以外には披露したことがない。屋根裏から小頭と茉緒がもう3時間も続くあられもない絡みを見続けている。襖越しに2人の下忍が伏せている。寝てしまってから襲うと見たが小頭が合図を送った。
 襖から最初の突きが入った。男は稚児を抱き上げて正面を向いた。刀は稚児を突き刺している。瞬間に枕の刀を取り上げて2人目の突きを下から切り上げる。背中に飛び降りた小頭を一睨み稚児ごと投げつけられた下忍は今度は上から切り下げる。腕は小頭より上だ。小頭は瞬間遅れたことで一振りは空を切る。
「百地の手のものか!」
 次の瞬間剣先が突きだされ小頭の左目を突き刺す。ほとんど同時に茉緒は天井から飛び降りた。自分でもどういう動きをしたのか分からないが剣先が相手の喉を掻き切ったようだ。
 この日から小頭は茉緒を抱こうとしない。それどころか口封じに小金の袋を握らせた。お頭には百地で襲われ2人を失ったと報告している。だがこの暗殺の後百地はここを直轄地とし服部と激しく争った。小頭はその日から左目に眼帯をして片目の以蔵と呼ばれることになる。




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混沌1
 この時代の伊賀は忍者の束ねの豪族がひしめき合っていた。抜け忍村などはその数に入らない。だが茉緒のいた時代は服部、百地、藤林に束ねられつつあった。
 茉緒は百地に小頭と半月にもわたり商人と色女として逗留することになった。小頭は茉緒に気があり毎晩誘いをかけてくる。幸作のようにはいなせず遂に抱かれることになった。でも抱かれたと言ってもそれだけのことだと茉緒は思っている。くの一の定めでもある。だがそれで小頭は茉緒に気を許すようになっている。
「今日は百地の小頭と会う。その後お前は小頭に抱かれるんだ」
と言われて旅籠の隣の部屋で素裸で寝かされる。抜け忍の小頭は柘植の使者として百地と交渉している。
「手を結ぶのはいいが柘植の動きがいまだ納得できない。柘植の手のものとして服部の金庫番を襲ったのは承知している。だが我が百地の間者はあの指示は服部宗家が柘植に依頼したと聞く。宗家が資金を手にしたかったのだそうだな?」
 茉緒は驚いて耳を澄ませる。
「柘植の宿命なのですよ」
「なら国境の豪族を消すのだ」
「それは百地の?」
「確かに身内だが服部と通じている。それにお前も柘植の抜け忍じゃないか。応分の手当ては出す」
 しばらくして話が途絶えて襖が開いて男の体が潜り込んでくる。茉緒は恥ずかしそうに身を曲げて尺八をしながら男を後ろの穴に引き込む。間断なく締め付けるとまず持たない。
 小頭はお頭の魁とは違うことを考えているようだ。屋根裏にいる2人の下忍はすでに小頭の腹心だろう。そして茉緒も腹心と考えているのだろうか。この後必ず小頭が求めてくる。





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夢の芽12
「絹の住まいはどこだ?」
「一番奥の傾斜にある」
 凛の後を茉緒が坂道を登る。
「凛だね?」
 板戸に手をかけた同時に中から声がかかる。外を窺える工夫が施されているのだろう。
「痛み止めを届けに来ました」
 菜緒はお祖母ちゃんから薬の処方の指導を受けてきた。実際に武器として使うことも多い。
「ありがとう。腕の付け根が腫れているのよ。でも凛に助けられたよ」
「ところで絹さんは藤林の抜け忍ですね?」
「誰に聞いた?」
「頭です。私も藤林の抜け忍に運ばれてここに来ました。15年前の大火ご存知ですか?」
「知ってるわ。それが元で追い払われたのよ。とくにお館付きの女中や警護が5人追放された」
「お館は大やけどをしたと聞いていますが、犯人は分かったのですか?」
「服部の手のものとしか?」
「亡くなったり消えたものは?」
「警護の忍者が2人と小頭と息子が焼け死んだと聞いています」
「死体は?」
「小頭と息子の死体はなかったと思うわ」
 私を抱えて走ったのは父だ小頭ではない。あの感触は父の感触だ。と言うことは今の頭巾を被った藤林のお館は何者だ。






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Author:yumebito86864
夢人です。『夢追い旅』『ぽろんの女』『空白』『刺青』と書き続けてきましたが、すべて古いノートから書き起したものです。今回は初めて時代物でこれは私の夢の中で永い時間をかけて育ったものです。



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