復讐の芽 ***藤林長門守***
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復讐の芽 ***藤林長門守***
混沌1
 この時代の伊賀は忍者の束ねの豪族がひしめき合っていた。抜け忍村などはその数に入らない。だが茉緒のいた時代は服部、百地、藤林に束ねられつつあった。
 茉緒は百地に小頭と半月にもわたり商人と色女として逗留することになった。小頭は茉緒に気があり毎晩誘いをかけてくる。幸作のようにはいなせず遂に抱かれることになった。でも抱かれたと言ってもそれだけのことだと茉緒は思っている。くの一の定めでもある。だがそれで小頭は茉緒に気を許すようになっている。
「今日は百地の小頭と会う。その後お前は小頭に抱かれるんだ」
と言われて旅籠の隣の部屋で素裸で寝かされる。抜け忍の小頭は柘植の使者として百地と交渉している。
「手を結ぶのはいいが柘植の動きがいまだ納得できない。柘植の手のものとして服部の金庫番を襲ったのは承知している。だが我が百地の間者はあの指示は服部宗家が柘植に依頼したと聞く。宗家が資金を手にしたかったのだそうだな?」
 茉緒は驚いて耳を澄ませる。
「柘植の宿命なのですよ」
「なら国境の豪族を消すのだ」
「それは百地の?」
「確かに身内だが服部と通じている。それにお前も柘植の抜け忍じゃないか。応分の手当ては出す」
 しばらくして話が途絶えて襖が開いて男の体が潜り込んでくる。茉緒は恥ずかしそうに身を曲げて尺八をしながら男を後ろの穴に引き込む。間断なく締め付けるとまず持たない。
 小頭はお頭の魁とは違うことを考えているようだ。屋根裏にいる2人の下忍はすでに小頭の腹心だろう。そして茉緒も腹心と考えているのだろうか。この後必ず小頭が求めてくる。





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夢の芽12
「絹の住まいはどこだ?」
「一番奥の傾斜にある」
 凛の後を茉緒が坂道を登る。
「凛だね?」
 板戸に手をかけた同時に中から声がかかる。外を窺える工夫が施されているのだろう。
「痛み止めを届けに来ました」
 菜緒はお祖母ちゃんから薬の処方の指導を受けてきた。実際に武器として使うことも多い。
「ありがとう。腕の付け根が腫れているのよ。でも凛に助けられたよ」
「ところで絹さんは藤林の抜け忍ですね?」
「誰に聞いた?」
「頭です。私も藤林の抜け忍に運ばれてここに来ました。15年前の大火ご存知ですか?」
「知ってるわ。それが元で追い払われたのよ。とくにお館付きの女中や警護が5人追放された」
「お館は大やけどをしたと聞いていますが、犯人は分かったのですか?」
「服部の手のものとしか?」
「亡くなったり消えたものは?」
「警護の忍者が2人と小頭と息子が焼け死んだと聞いています」
「死体は?」
「小頭と息子の死体はなかったと思うわ」
 私を抱えて走ったのは父だ小頭ではない。あの感触は父の感触だ。と言うことは今の頭巾を被った藤林のお館は何者だ。






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夢の芽11
 服部と藤林が不穏な雰囲気に包まれている。藤林はすでに六角家の城攻めから戻ってきており、服部との国境に結界を張ったと言う。だが服部宗家は慎重で事件の起こった別宅に探索隊を入れている。今日は抜け忍頭魁に母屋に呼び出されている。
 魁の横に小頭が座っている。
「下忍の2人は覆面していたが、茉緒はどうだ?」
「私は仕事の時は化粧に手を加えています。あの時はこの化粧でした」
 茉緒は何十と言う化粧型を紙に描いて記録している。小頭も同様にしている。
「やはり幸作か」
 幸作は大半が長期的に潜入して手引きすることが多い。この場合化粧を施し続けるのは難しい。
「実は幸作の特徴を女中が服部の探索に伝えたのだ。まだ似顔絵を見ていないがしばらく幸作を母屋に閉じ込めよう。茉緒もあの時の化粧はするな」
「私が使った短刀は?」
「あれは藤林の女忍の抜け忍が持っていたものだ」
「藤林の抜け忍がいるのですか?」
「知らなかったのか?今回抜け忍狩りで右腕を失った絹だ」
 絹。凛が助けた40歳過ぎの大年増だ。
 母屋を出ようとして背中から飛びついてきたものがいる。ものの見事に土間に一回転して気絶している幸作だ。もし母屋でなければ確実に切り殺していただろう。
 茉緒は今は絹のことしか考えていない。



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夢の芽10
 待ち合わせの旅籠に予定通り到着した。今回は小頭中心に5人が思い思いの格好で旅籠に入った。すでに幸作は女中の一人を抱き込み服部の一豪族の別宅に手引きする。ここは女を囲っていると言う。服部の金庫番も兼ねているこの男は女好きで有名だ。女衒に化けた小頭に連れられ茉緒が綺麗な着物に着替えて建物の中に入っていく。すでに2人の忍者は屋根裏にいる。
 さすがに商談では3人の家来が取り囲んでいて隙はない。小頭が目で合図する。寝間で殺せと言うことだ。部屋に入ると急に初老の男の顔がゆるんでくる。ほの明るい光の中で茉緒は全裸になる。この効果を読みこみ済みだ。男は無防備に着物を脱いで裸になる。茉緒はお祖母ちゃんに言われて玉も竿も押し込んで隠すことを覚えている。だから凛とするときは根元を布で縛る。
 男のものを後ろの穴に引き込み抱きしめる。茉緒に抱きしめられると大概の男は気を失う。だがさすがに忍者だ。涎を流しながらも意識はある。すばやく髪に隠していた短刀で脇腹をえぐる。さすがに血の気が引く。この短刀は小頭から渡されていたもので藤林の印がある。
 天上の忍者が下りてきて襖の向こうの侍を串刺しにする。廊下でも乱闘する小頭が見える。同時に幸作が忍び装束を投げてくる。
 それから無意識に走り続けている。
 これは柘植の依頼だ。服部と藤林をぶつけて柘植は何を考えているのだろうか。藤林の謎はどこかで茉緒と繋がっている。
「幸作がね姉さんの裸のこと言ってるよ」
 凛が布団に潜った来て抱きついてくる。




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夢の芽8
 夜明け前にまやかしの道に配置される。女年寄りばかりで15人ほどで長槍をやぶの中で構える。お祖母ちゃんはこの時に槍を引っ張られて切られて死んだ。男組は仕掛けのない道から10人ほど切りかかる予定だ。鈴に音が鳴る。早くも1陣がまやかしの道には踏み込んだようだ。仕掛け弓が飛ぶ音と悲鳴が上がる。
「第1陣は20名ほどだ」
 伝令の声が飛ぶ。草むらを走る音がして一斉に長槍を突き出す。明らかに茉緒の槍に手ごたえがあった。だが引きずられる年寄りが出る。凛が槍を差し込んで応戦する。男組が攻め込んでいる。今のところ優勢のようだ。第1陣が引き揚げている。
「下がるんだ!」
 源蔵爺の声が滝壺から聞こえる。ほとんど同時に爆発が辺りに起こる。藤林得意の火薬を使いだした。滝壺に戻ると、3人が足らない。凛もいない。茉緒の体が動き出す。爆発はまだ続いている。男組の死体がありその奥に年寄りの死体が転がっている。
「姉さん!」 
 凛が背中に血だらけの仲間を背負っている。
「大丈夫?」
 そのまま二人で担ぐと滝壺に撤収する。源蔵爺が大きな筒を背中の抱えている。
「第2陣が来る。長槍もこの後突入すんだ」
 これは源蔵爺の得意な目潰しだんだ。男組も尾根に並ぶように頭を先頭に待機している。
 2回目の戦闘は意外に半刻せずに終わった。やはり服部に対するポーズだったのだ。それでも抜け忍村は3名を失った。藤林の残して行った死体が7体からすると善戦だったと言える。












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yumebito86864

Author:yumebito86864
夢人です。『夢追い旅』『ぽろんの女』『空白』『刺青』と書き続けてきましたが、すべて古いノートから書き起したものです。今回は初めて時代物でこれは私の夢の中で永い時間をかけて育ったものです。



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