復讐の芽 ***藤林長門守***
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復讐の芽 ***藤林長門守***
地に潜る5
 思ったより早く堺の片隅に小さな問屋が見つかった。店を閉じて1年、元は廻船問屋で店の裏から船が出せるようになっている。早々に女主人の茉緒が流行り病でなり薬問屋は手放され運送業は廃業した。小さな問屋の主人は老人に変装した。茉緒は完全に消えた。
 宗久の口利きで今回長島へ武器や食糧を運んでいた廻船を人ごと買い取って下忍も入れて操業を始めた。一方秀吉は九州に大軍を進めている。
「服部が鉄砲長屋を買い取っています」
「遂に家康が堺に出先を置いたか」
「屋敷には30人は下忍が詰めているかと。服部は茉緒さまの死を調べています」
 この女忍は抜け忍村から今回呼び寄せた薬売りの束ねで実質問屋の番頭になる。
「伊賀はどうか?」
「凛さまが小頭として百地藤林の残党として服部の基地をお襲っています。源爺さまは30人を投入して抜け道を作られています。地図上は紀州の海に出れると言うことです」
「紀州の海か」
 ここまで逃げる日が来るような気がする。
「宗久さまは?」
「紀州の鉱山に戻られました。これは付き人の話ですが現在は鉄ではなく銀を掘られているようです」
「どうして銀だ?」
「異国では金より銀だそうです」









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テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

地に潜る4
 3か月ぶりの堺だ。利休から再三の呼び出しにも堺に戻らなかった。だが今茉緒は宗久の屋敷にいる。
「ご無沙汰しています」
「儂こそ久しぶりの堺だ。もはや利休が秀吉さまの参謀だな」
「私は好みません」
「秀吉さまも変わられたそうな」
 柴田を滅ぼしてお市姉妹を引き取られ豹変したと噂だ。
「私は秀吉さまの時代も長くないと。それで宗久さまに相談がありまする」
「儂はもう隠居だぞ。利休に頼め」
「いえ利休は商人に信用がありません。実は宗久さまに頂いた店も含め完全に消してしまいたいのです」
 しばらく考えていた宗久が頷いて、
「儂の仲間に引き取らそう。それからどうするのだ?」
「手ごろな問屋が」
「いつまでに?」
「早い方が」
「秀吉ではだめか?」
「あの人は器用な部下にすぎません。天下人の構想がないのです」
「次は誰だ?」
「家康です」
「服部との因縁だな」
















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地に潜る3
「元の村が残っているので案外早いわ」
 吊橋で降りると源爺が迎えてくれる。河原の奥の草むらが以前と雰囲気が違う。
「この草むらの中に鉄板を張った小屋がある。ここから鉄砲が20艇打てるさ」
 ここはあくまでも服部軍を最後に迎え撃つところだ。
「山の上の砦は現在登り橋以外は崖に」
 ここでは年配の下忍が20人ほど働いている。
「登り橋以外は崖が急で登れなくしてしてここも鉄砲と火薬玉ですね」
「最終的には鉄砲を50艇持ち込むわ。砦は50人は生活できる。ここからの襲撃は?」
「しばらくは場所を特定させないので抜け忍村からです」
 砦も鉄板で覆われている。下には以前の小屋が残っているが、新しく耕された畑が広がっている。
「問題はここだわ」
 源爺が砦の裏の崖を指す。
「この上に濁流で崩れた一人が通れる谷があるがここから逃げ道を考えているのや」
「尾根道に出れれば抜け忍村に」
「ここでの一戦はいつくらいを?」
「家康の力が強くなれば服部が力を増す」
「逃げ道作りに10人を入れよう」










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地に潜る2
 源爺の20人の偽の抜け忍村の建設部隊がさっそく送り出された。場所は昔服部に襲われて崩壊した抜け忍村を選んだ。伊賀の乱の前に服部の抜け忍狩りで15村が消えている。茉緒は凛を連れ偽の抜け忍村に一番近い服部の豪族の武器庫を襲う。
 伊賀の乱の後再び薬売りを伊賀に30人を投入している。今回の作戦も彼らの活躍が大きい。
「服部の人数は?」
「薬売りの報告では50人ほどと言うことです。屋敷を10人で鉄砲射撃をします。それで屋敷に集まったところで火薬玉を投げ込み武器庫を燃やします」
「切り合いは避けること。じっくりこの地域を切り裂く」
 茉緒はこの作戦にはしっかり時間をかけようと思っている。凛が移動してすぐ発砲が一斉に起こる。屋敷から応戦が始まる。半刻で大半の服部が屋敷に集結している。茉緒は火薬玉を携えて武器庫を取り囲み鍵を壊す。同時に中から2人が飛び出して来るのを切りつける。
「投げ込むんだ」
 その声で武器庫に大量の火薬玉が投げ込まれる。茉緒の合図で一斉に下忍が引き上げる。今回はあくまでも武器庫の破壊で反服部勢力の旗揚げだ。忍軍は深い森に入って行き茉緒だけは一人谷川にそれる。2刻谷川沿いを走り尾根道に登る。そこから半刻で獣道に逸れる。
「こちらです」
 樵の男が顔を出す。昔はここに吊橋がかかっていたのだ。
「1里先に移動しました」







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地に潜る1
「凛、元気になったらしな」
 母屋の裏に行くと父と母の墓に菊の花を挿してくれている。その横に慎吾の小さな無名の墓がある。
「慎吾の名を入れてやれ。慎太郎のためにもな」
「秀吉さまが天下を取られたのですか?」
「まだよく分からない。服部の動きは?」
「服部が再び伊賀を掌握してます。百地や藤林狩りを続けているのです。それで藤林領に定期的に鉄砲隊を出しています」
「どれくらいる?」
「それが明智の乱以降服部の部隊が2百ほど家康の元へ」
「服部は家康の策謀で動き回っている。今は秀吉さまの傘の元にいるがこの間に抜け忍村の将来を見つけないと」
「何かあったのね?」
「おそらく家康の時代が来る。準備に入る」
「何をすれば?」
「抜け忍村の偽の情報を流す。仮の抜け忍村を作る。その周辺で度々服部を襲う。でもすぐには見つられてはいけない。これは源爺に任せる。堺の店も考えてみる」
 初めて口にして茉緒は気持が吹っ切れた。
 茉緒はその夜袂を分けて1年ぶりに凛を抱いた。彼女の肌から慎吾の匂いが漂ってくる。










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yumebito86864

Author:yumebito86864
夢人です。『夢追い旅』『ぽろんの女』『空白』『刺青』と書き続けてきましたが、すべて古いノートから書き起したものです。今回は初めて時代物でこれは私の夢の中で永い時間をかけて育ったものです。



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