復讐の芽 ***藤林長門守***
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復讐の芽 ***藤林長門守***
騒乱12
 朝に農夫に扮した藤林の忍者をつけて丸山城の作業現場に入る。織田信長の次男北畠信意の現場の監視は意外に薄い。駆り出された農夫に異様な動きが見える。茉緒は男の農夫になり火薬が仕掛けられそうな場所を見て回る。すでに火薬が仕掛けられている。
 日が落ちて農夫達が引き上げて行く。だが暗がりには人の気配がする。茉緒もお同じように忍者に変わっている。藤林の中に混じる。
「兵は100人ほどしか残されていない。狼煙が上がったら火を付けろ。慌てるな。切り抜けろ」
 慎吾の声だ。茉緒は凛を探す。それぞれが分業しているが戦いになればどうだろう。半刻して狼煙が上がる。至る所で爆発が起こる。材木には火がつけられる。兵の間を忍者が切り抜ける。鮮やかな戦略だ。
 ようやく下の城から兵が湧き出てくる。作業現場からすでに忍者は出てしまっている。山の中を走り抜けると砦を潜る。壇上に百地のお館が頭巾被って床几に掛けている。今回の騒動の頭は百地だったのか。本願寺が絡んでいるのか。
 壇上に服部の豪族が上がっていて慎吾の顔もある。
「北畠信意の軍は8千人。当軍は1割に満たないが十分戦える」
 おそらくその準備はできているようだ。だがその後ろに信長がいる。信長をどうするかが飛んでしまっている。凛の姿を探すが見つからない。
 茉緒は急いで戻ることにした。頭として腹をくくる時だと思った。慎吾と凛と袂を分かつ時だ。走りながら涙が溢れてくる。







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騒乱11
 一人で抜け忍村を早朝出た。途中薬売りを呼び伊賀を歩き回る。
「服部は?」
「主要部隊は徳川に張り付いているようです。服部一門はそれぞれ勝手な動きをしています」
「藤林の繋ぎの場所は?」
「あそこの旅籠です」
 そこで別れて薬売りで合い部屋に入る。見たところ藤林の忍者は離れに2人いるようだ。夜になって天井裏に登る。2人から6人に増えている。凛の部隊だ。
「丸山城の築城現場を焼き打ちする」
「手勢は?」
「百地30人、藤林20人、服部50人が集まる」
 丸山城は織田が乗っ取った城だ。これが織田の戦略だ。ただこの流れは伊賀の侵略に繋がる。だがこの流れを止めることができるのだろうか。
「お頭は今回は反対してるとか?」
「それはみんな気にしている」
「最近は死者が増えている」
 茉緒は部屋に戻って目を閉じる。伊賀のために立ち上がるべきなのだろうか。だが抜け忍村は戦わない方針を出している。藤林を2つに割るべきか。夢の中で父が久しぶりに現れる。今は父はにっこり笑っている。





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騒乱10
 まやかしの道から抜け忍村に入る。洞窟で荷物を運んでいる少年に声をかける。源爺は森の奥の移っているようだ。獣道を少年と一緒に抜けて母屋の見える盆地に降りる。今までの3倍ほどの畑に5人が鍬を奮っている。
「ほとんどがこちらに移っているわ。道場も建てたよ」
 源爺は新しい隠し村造りを指揮している。
「慎吾達が一向宗に嵌って言うことを聞かないの」
「一向宗は凄い勢いだ」
 抜け忍村にいても薬売りから情報が入る。
「一向宗では忍者は食べてけない。だが大きな戦いを経ないおさまらんだろ」
「どうすれば?」
 母屋の向こうには稲田が広がっている。女達がゆっくり畦道を降りてくる。
「ここは平和ねえ」
「大きな戦いが始まったらこの村で休めばいい。織田が勝てば忍者は生き残れない。だが一向宗では国は持たない。茉緒はここから忍者を連れて行くか?若いのを入れて12人は可能だが?」
「連れて行かない」
 今藤林では茉緒は浮いてしまっている。だが慎吾は茉緒が稼いできたお金を食いつぶしているばかりだ。どうして分かってくれないのだろうか。
「慎吾はお館ではないだよ」





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騒乱9
 藤林に戻ったが屋敷は閑散としていた。
「どうしたのですか?」
 妹御の部屋を覗いた。困った顔で、
「慎吾が急に戻ってきて組の再編をして出て行ってしまったの」
 その話を聞いて屋敷の監視役の抜け忍村の年寄りを呼んだ。もともと奥方の監視をしてきた。
「小頭の組は2組で22人いましたが、12人を失っていて凛さまの組を10人加えて2日前に出発されました」
 凛は約束を守らなかった。もはや慎吾と凛は男と女の関係になっている。
「どこに行ったか分かるか?」
「途中まで追いかけましたが、伊賀に入っていきました」
「伊賀?」
「近頃は服部対藤林百地と言う構図でもなくなっているのです」
「では誰と戦う?」
「対信長です。だが藤林同様組織としてはまとまってません」
「茉緒はどう思う?」
 妹御も慎吾のことが心配なようだ。
「私は信長と接しているので怖いのです」
 茉緒はその夜一人抜け忍村に走る。





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騒乱8
 岐阜の町も想像通り活気があった。信長は町作りに長けている。だが戦闘状態にあるのか町には兵が溢れている。検問も厳しいが今井宗久の名を出すと城内に入れられた。今回は鉄砲の名手を同行していない。どうも彼は本命の本願寺に行ったようだ。それほど宗久の目算が外れたんだろう。
 鉄砲の確認まで半分は岐阜の探索に出した。しばらくして茉緒だけが信長の部屋に通された。
「宗久が慌てて寄越したようだな。魔王でなければ切り捨てていたかもしれぬ」
 宗久の胸の内を読んでいる。
「今回は忍者も本願寺に廻ったようだな」
 何もかも見透かされてる。
「浅井に入ろうとした一隊を撃ち取った」
 先頭に入った百地のことだろう。慎吾がいたかもしれない。
「信長さまは忍者を使わないのですか?」
「忠誠心がない奴はいらない。だが部下はこそこそ使っておるわ」
と言うと珍しく信長の手が茉緒を抱きかかえている。抵抗することなく自分から信長を迎え入れている。
「いい持ち物をしている。女子にしては」
 信長のものは細い。肌は吸い付くようだ。
「小姓にならんか?」
「いえ、こうしてたまに寄せてただきます」 
 茉緒は下がると一隊ををまとめ伊賀に急ぐ。





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yumebito86864

Author:yumebito86864
夢人です。『夢追い旅』『ぽろんの女』『空白』『刺青』と書き続けてきましたが、すべて古いノートから書き起したものです。今回は初めて時代物でこれは私の夢の中で永い時間をかけて育ったものです。



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