復讐の芽 ***藤林長門守***
復讐の芽 ***藤林長門守***
大海へ11
 久しぶりの抜け忍村だ。だが畑にいるのは年寄りばかりだ。リーを連れて母屋を覗く。源爺が片腕の妻とお茶を飲んでいる。傍らに若い女が赤ちゃんを抱いている。
「まだ赤ちゃんがいたのだな?」
「此奴が孤児を育て始めている。7人も今はいるわ」
 抜け忍村は昔から孤児を育てて下忍にしてきた。戦士の補充として伊賀は当たり前のことだ。
「服部はどうだ?」
「主力は江戸だが偽の抜け忍村に時々に現れている。だが最近はまやかしの道に柳生が。これは薬売りの情報だが豊臣の財宝を宗久が藤林に運ばせたと噂だ」
 藤林は凛が頭の頭巾を被って動き回っていたのだ。
「薬草園を吉野に?」
「今は薬草が主力になったからのう。こちらの薬草園では5人、吉野は6人が働いてる。ところでいつアユタヤに行く?」
「実は豊臣の財宝の噂は事実なのだ。だが宗久が仕掛けたことなのだ。それを光秀に嗅ぎつけられた」
「港に出る尾根道は?」
「10人を出して完全に偽の抜け忍村からの尾根道を塞いだ。抜け忍村からしか港に行けない。だが修験場はどうする?」
「このリーもそこにいた。あそこは問題ない。だが港は要注意だ」
「建物はすべて解体して元の材木の積み出しの姿に復元をしたわ。港の底はそのままだが外からは分からんからな」
「一度日本を離れる前に柳生を覗いてくる」
 服部ばかりに目が言っていたようだ。だがこれからは柳生だ。









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大海へ10
 リーを連れて石見銀山に向かう。そろそろ宗久と将来の話をすべき時がきた。リーとは同じ床をとる仲になった。旅先では薬売りの姉妹だ。山の中を3晩歩き聞いていた山道まで来た。そこに鉄砲を持った男達に囲まれる。
「茉緒か!」
 髭むじゃの宗久が小屋に迎え入れる。
「狙われてますよ」
「この石見も終わりだと思っているわ。大久保さまからも連絡を貰っている。実はこの石見の廃鉱に豊臣の財宝を運んでいる」
「豊臣の再興か?」
「いや、秀頼の対価だ」
「運び出すのか?」
「港の整備と隠れ山道も造った」
「もう何回南蛮船が来た?」
「3回来たが後10回はいる」
「大久保さまの話では天海僧正が柳生を直接指導しているらしい」
 天海がここでも絡んでくる。
「宗久さまはいつアユタヤに?」
「次の便でと」
 茉緒はリーを連れて石見銀山の中を見て回った。豊臣の財宝はやはり存在した。





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大海へ9
 宗久の売られた本店が襲われて主人と雇われ人が6人殺された。茉緒は一人屋敷に忍んだ。物取りとして奉行所は処理しているが服部だ。雇われ人が半分宗久から引き継がれていて主人も元手代だ。服部は宗久を探している。茉緒は急いで和歌山の屋敷を目指した。
 山道に入ると、懐かしい屋敷の屋根が見えた。ここには運び出して何も残ってないが、年寄りが一人残っている。念のため裏山から忍んで入る。嫌な予感がして天井に忍び込む。年寄りが柱に縛られている。服部か!
「宗久はどこに行った?」
 侍が座っている。
「ここは廃鉱にされ出ていかれましただ」
「廻船がそこの港から出ていたようだが?」
 かなり調べている。
「知りません」
「死ぬことになる」
 茉緒の体が自然と動く。次の瞬間飛び降りて構えている。侍も剣を構えている。なかなかの使い手だ。
「柳生か?」
「噂の魔王か?」
 杖を突いていたのが嘘のようだ。一瞬遅れたようだ。
 だが柳生が倒れた。リーの手離剣が動きを一瞬遅らせた。
「ずっとつけてたのか?」










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大海へ8
 凛たちが日本を離れた。茉緒は堺に戻ると廻船と問屋をまとめて売却し、残った手のものを小さな材木問屋に集めた。宗久も堺の本店もすでに閉めていた。大久保長安が左遷されたという噂が耳に入る。宗久の悪い予感が当たったと言うことになる。
 堺の町には服部と柳生が入り乱れている。
「薬売り方は?」
 取りまとめの小頭が問屋を整理して報告に来る。
「小頭はアユタヤにいかなかったんだな?」
「私はもう若くないので薬売りを束ねて行きます」
 薬草園は抜け忍村にある。薬売りは初めの頃は下忍だったが、今は草として畿内に潜んでいる。
「源爺とも話しましたが、今回吉野に薬問屋を買いました。ここでも薬草園を作って抜け忍村から2人呼んでいます」
「薬売りは今何人いる?」
「100人はいます。彼らの面倒を見たいと思っています。源爺は将来この耳は役に立つと」
「そこからアユタヤに呼ぼう」
「それから柳生が堺の商人を調べています。取り潰しという噂です。それと秀頼を探しているようです。徳川も秀頼が死んでないと確証を持っているようです」
「今更豊臣復活はないだろう」
「ではないのです。豊臣の財宝ですよ」






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大海へ7
 堺に来てから廻船で造船所を3往復した。金を江戸に運ぶのは宗久と会ってから止めた。南蛮船では泉州から宗久の屋敷のものはすべて積み込んだ。宗久はそのまま石見銀山に入ってしまった。茉緒は4隻目の南蛮船が出来上がるので造船所に戻る。
 港の屋敷に入ると、凛と源爺が椅子に掛けている。
「姉さん、源爺は抜け忍村に残るってきかないの」
「どうしてですか?」
「年寄りを中心に20人ほどが残ると決めたわ」
 凛は男の子を膝に乗せている。
「凛は4隻目の南蛮船に乗って先にアユタヤに行ってくれ」
「今回は50人ほどが乗ることになるよ」
「泉州には寄らず行くのだ」
「姉さんは?」
「出来るだけ堺を整理して向かうよ。この港は残すが屋敷と造船所は解体して木材の切り出し港に戻す」
「それで何人くらい日本に残るんだ?」
「堺に7人、この港に5人、江戸には6人。抜け忍村を入れると38人になるな。でも何かあると迎えにきっと来る」
「廻船は16艘あるがどうする姉さん?」
「2艘を材木運搬に残して後は売り先を見つけている。堺の商人は皆調べられているさ。凛はアユタヤに行ったら宗久さまの屋敷と倉庫を見つけておいてくれ」
「宗久さまも?」  










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yumebito86864

Author:yumebito86864
夢人です。『夢追い旅』『ぽろんの女』『空白』『刺青』と書き続けてきましたが、すべて古いノートから書き起したものです。今回は初めて時代物でこれは私の夢の中で永い時間をかけて育ったものです。



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