復讐の芽 ***藤林長門守***
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復讐の芽 ***藤林長門守***
暗殺7
 順慶の軍は逃げるように退却していく。藤林はしんがり(殿)を守り下がっていく。慎吾も茉緒も足軽の格好で並んで歩く。
「山を下りきったところでお頭が藤林に戻る。これについては先程まで揉めた」
 口の動きだけで話している。
「どうして?」
「順慶の警護に10人を希望したのだが、お頭は自分を守るために10人を要求した。それで私の配下を5人入れた。その中に下忍として私も入る」
「藤林の成敗は私の忍軍でする」
「分かっている。合図を貰ったらしばらく姿を消す。だがどうするのだ?」
「藤林を殺したら私がお頭の頭巾をかぶる。だからお頭に付く5人はすべて殺すがいい?」
「前の小頭の部下だいい」
「慎重を期すために凛の部隊も呼んだ。凛を茉緒としてお頭を助けた抜け忍隊として半分藤林に連れて行く」
「だが奥方はどうする?」
「しばらく熱病で隔離する。私は京に行く。慎吾はその間に藤林の建て直しをして」
「今回でほとんど前の小頭の部下はいなくなる。弾正はこれからどうなる?」
「後ろ盾の今井宗久も離れて行ってる。今回は信長に詫びを入れたがまた隙を見たら牙をむくと思う。何より果心居士が見放した」
 茉緒は隊から少し早く離れて凛と合流する。









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テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

暗殺6
 慎吾は戻って来ず明け方に順慶の兵が山道を登っている。どうも修験堂を攻めること決めたようだ。茉緒は下忍を起こし兵の後ろに張り付く。この道はかなり険しく馬などは使えない。おそらく藤林が先導しているのだろう。
 未明には修験堂が見えて燃え上がっている。茉緒は下忍を連れて回り道をして修験堂の裏側に出る。修験者たちの死体がおびただしく転がっている。奇襲は成功したように見える。獣道から崖を登る。修験者は至る所の洞穴に住んでいる。ここに逃げ込まれたら追い詰めるのは難しい。すでに戦闘が始まって1刻半になる。前方に朝陽を浴びた大きな岩山がある。筒井の旗がなびいている。
 茉緒が見上げたその時、にわかに黒い雲が湧いてきて雷が鳴り突風が吹いた。旗とともに兵が空に飛んでばらばら落ちてくる。果心居士がいる!
 兵が雪崩を打つように撤退を始めている。茉緒は草むらに身を潜ませて眺めている。順慶が兵に抱えられるように降りてくる。殿(しんがり)に藤林の忍者が修験者と戦いながら降りてくる。茉緒は下忍に手を上げて小頭を取り巻いている修験者に切り込んでいく。
「助かった」
「あれは何だ?」
「果心居士よ。誰も勝てないわ」
「あれが果心居士か。修験者も2百ほど倒したが筒井の兵も2百は失った」
「藤林は?」
「30人出したが半分は失った。お頭は本陣に残っている。やるなら戻る時がチャンスだ」










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暗殺5
 弾正の京屋敷から高額な陶器やお金を大和に運び込むことになった。凛が小姓姿で荷隊を護衛する。茉緒は反対に影武者として下忍を5人連れて街道を走る。この際弾正の周りから抜け忍の仲間を引こうと考えている。大和に着くと山に天守閣の建築中の櫓が見える。
「私は下忍を連れてこのまま藤林に走るが凛は一度村に戻れ。それでいつでも10人ほど下忍を出せるように手配してくれ」
「やるのね?」
「やれるかどうかわからないけど、藤林を守るためにも急ぐわ。服部が伊賀を統一する。強い後ろ盾がいる時代に人るのよ。弾正は目が眩んでしまっている」
 別れてそのまま藤林に走る。途中やたらと兵にぶつかる。筒井順慶の兵だ。ここは彼の領地からは相当離れている。それで下忍をみんな村に散らばせて茉緒も順慶の本陣に忍び込む。千の兵が出ている。ここは弾正の味方の豪族だったが、応援もなく攻め込まれたようだ。
 藤林の忍者が本陣取り囲んでいる。茉緒は凛と入れ替わるために持っていた小姓姿に着替える。それで堂々と本陣の中に入っていく。
「茉緒か?」
 奥の方から大きな声がかかる。床几に座った順慶だ。
「兄は今修験堂を探索に出ておる。弾正が頭を押さえられているうちに領地を拡大しておく。ついでに修験堂を攻めるわ。織田の件役に立った」
「下忍も連れておりますゆえ厩でもお借りします」
「小頭には伝えておこう」








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暗殺4
 将軍は手紙を見て町娘姿の茉緒を見る。
「すでに信長勢5千が赤松を攻めた。あっけなく城を明け渡して逃げ出したそうぞ。この分なら六角も総崩れじゃな」
「弾正さまは?」
「すぐに兵を引いて信長に詫び状を入れたそうだ」
 宗久の読み通りだ。
「将軍さまは?」
「今は遠い毛利より目の前の織田だな。それで茉緒は信長をどう見る?」
「弾正さまより遥かに視野が広ろうございます」
「弾正の世もお仕舞だな。だがな信長より強い国は多い。だが信長殿をお迎えしよう」
 将軍の館を出ると路地から慎吾の声がする。見上げると若侍の姿で立っている。
「将軍は六角を見放した。それで藤林の忍軍を引き上げるために来た」
「それは頭の?」
「小頭として六角に伝えた。頭はもう判断能力がない。私の判断だ。今後は筒井順慶に付きます」
「それなら順慶さまに織田信長と組まれるようにお伝えください」
「織田の時代が来るのか?」
「そのように思えます」
「藤林には?」
「近々に忍んで行きます」












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暗殺3
 織田に送る鉄砲は弾正の京屋敷に納品するものだったようだ。今回は3人を連れて秀吉と清州に運び組む。手柄を立てて藤吉郎から秀吉になったという。清州に付くと城下町は更に賑やかになっている。秀吉から信長の居間に行くように言われている。
「魔王と呼ばれているらしいな?」
 茉緒は町娘の格好で信長の前に座る。
「京に上られるとか?」
「まず赤松と六角と一線を交えてからか。弾正が後ろにいるのだな?」
「私は宗久の手先として弾正とは組しません」
「宗久は先を読んでいる。だが弾正は何を考えているのか?天守閣を建てているようだな?だがまだ時が早い」
 信長は手紙を書いていてそれを封に入れて茉緒に渡す。
「足利将軍に渡すのだ。彼の方が組み易い。だがどこまで持つか。弾正が京で動かせれる兵力は?」
「3千から4千」
「それだけか?弾正と対等に戦えるのは?」
「筒井順慶がいます」
「順慶か。猿に鉄砲隊を案内してもらうがいい」
 どこにいたのか秀吉が顔を出す。
「茉緒さまは気に入られてまする」
 秀吉は鉄砲隊の練習風景を店に連れて行く。凄い音だけでなく結構的を撃ち抜いている。
「これはいずれ大きな戦力になるわ」
「侍ですか?」
「足軽だ」













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yumebito86864

Author:yumebito86864
夢人です。『夢追い旅』『ぽろんの女』『空白』『刺青』と書き続けてきましたが、すべて古いノートから書き起したものです。今回は初めて時代物でこれは私の夢の中で永い時間をかけて育ったものです。



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