復讐の芽 ***藤林長門守***
復讐の芽 ***藤林長門守***
変遷11
 家康がついに大阪城を再び取り囲んだ。思ったよりの善戦だ。その頃長安から依頼を受けていた南蛮船が大筒を運んできた。茉緒は廻船を出して堺の港ではない泉州で積み替えた。南蛮船を見せるべきではないと思ったからだ。あくまでも宗久の納品とした。
 茉緒は大筒の攻撃が始まる前に大阪城に潜った。大阪城には大阪方の忍者はおらず服部が至る所にいる。茉緒は服部を避けるように天井を這う。茶々の居間だ。
「和解は?」
「考えられぬ」
 大野が茶々を抱いてた。秀頼は大野の子供と噂だ。二人は大阪城が崩壊するとは思っていないようだ。広間では籠城派と野戦派と延々と揉めている。だが二人がこの調子では。今頃大筒が据えられた頃だ。飛距離からここは届かない。闇が動いて取り囲んだ。3人がいる。茉緒は逃げ道を見定める。羽目板の向こうに2人の下忍を置いている。
「そろりではないな。まさか魔王が生きていたのだな」
「半蔵だな」
 忍者しか聞こえない声色だ。
「残念だが戦っている間はない。大筒が飛んでくる」
 次の瞬間に半蔵は消えた。茉緒も同時に羽目板に飛び込む。大屋根に大筒の玉が落ちた。半蔵は大筒が飛んでくるのを知ってた。半蔵は何かを探していた。家康は太閤の財宝だ。








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変遷10
 廻船を2隻江戸に出航させ茉緒は源爺と二人で抜け道に入る。途中樵が挨拶をして通り過ぎる。
「ここが修験者の監視をしている炭焼き小屋だ」
 ここで獣道が右側の険しい山に登って行く。
「樵の話では古い修験者場だがここ1年前から急に増えたそうだ」
「中に入った?」
「御堂が見えるところまで行ったがそこからは入れなかったわ」
 途中で源爺が作った小屋で1泊して3日目の昼前に偽の抜け忍村に出た。2人が監視していたのかそのまま砦に案内する。
「凛どうだ?」
 伊賀の地図を広げている凛が振り向いて笑った。ずいぶん明るくなった。
「伊賀の服部はほとんど大阪と江戸に行っています。その間に藤林屋敷や百地屋敷などが再建されています。この7か所が今は拠点です。抜け忍村の古い武器や鉄砲や火薬を引き渡してます。服部の屋敷の近くにも隠れ家を置いています」
「次の大阪城攻めで豊臣は滅ぶ。茶々は理解しておらぬ。だがもう家康には勝てぬ。狙い目は大阪城落城だ。ここで服部の拠点を同時に襲撃する」
「どうして?」
「服部は江戸に移してしまうのだ。その時点で服部の勢力は?」
「5百ほど。束ねているのは半蔵の父よ」
「3百は偽の抜け忍村で受けることになるな。こちらは?」
「下忍50人を用意しています」
















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変遷9
 やはり1回目の大阪城攻めが行われて豊臣は風前の灯だ。宗久は巧みに茉緒が調べてきた三成の後釜の大野という武将に大量の中古の鉄砲を売り込んだ。そのまま石見銀山に入ってしまった。茉緒は最後の銀を戻ってきた南蛮船に積み込だ。南蛮船の金は2隻の廻船に移し替えて紀州の港に向かう。
 港に着くと立派な新しい南蛮船が浮かんでいる。倉庫の横に新しい長屋が並んで見える。その横の傾斜が段々畑になっている。
「お待ちです」
と港の小頭が桟橋に迎えに来る。長屋の2階部分に案内する。
「ここがお頭のお部屋です」
「来ていたのか?」
 源爺が地図を広げて座っている。部屋には南蛮のテーブルと椅子が置かれている。
「新たに抜け忍村から子供も入れて30人連れて来たわ。海を学ばさないかんやろう。それにいよいよ戦いの日が来る」
「偽の抜け忍村には?」
「凛を始め下忍が30人詰めているさ。伊賀には服部の本隊はおらん。それで凛は生き残りの藤林などの支援をしておる」
「いざという時に何人動かせる?」
「百人かと」
「この地図をお持ちください」
 茉緒はアユタヤの海図と町の地図を出した。
「いずれ日本を出ることになります」















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変遷8
 やはり毛利の裏切りであっけなく西軍は敗北した。堺の町は権力構造の変化が如実に反映する。宗久が再び堺の屋敷に戻ってきている。だが表には出ようとしない。久しぶりに茉緒が宗久に呼び出されている。
「江戸に行ってきたのだな?」
「はい。長安さまにも会わせていただきました」
「彼はこれからの成長株だ」
「鉱山開発を供にされているようですね?」
「だが徳川政権は案外派閥争いが強い。それを見極めて行くのは難しい」
「銀はどれほど?」
 現在掘りだした銀は南蛮船で海外に運ばれ交換する方法で莫大な利益を上げている。
「そうだな。あの鉱山ではもう限界だな。今有望な銀山を見つけている。ここからの運び出しを用意してくれ。それから長安から大筒を頼まれている」
「何に使われる?」
「大阪城攻めだ」
「もうその準備ですか?」
「それから大阪城に集まっている武将を調べてくれ」
「それも長安さまの?」
「いやこれは儂だ。秀吉の財宝も捨てがたいからのう」
 また得意の欲が頭を持ち上げえている。







 

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変遷7
 関ヶ原で西軍と東軍が向かい合って動かない。家康の本陣には半蔵が百人ほどで固めていて潜むことはできない。下忍は家康以外の各陣に張り付かせる。茉緒は敢えて家康の本陣に潜ってみるが連日各将を集めている。ここで指揮している半蔵を見た。ここ数日の動きで茉緒は半蔵の一つの組の動きに目を付けた。
 彼らは西軍の毛利の陣に度々向かっている。今朝は朝から両軍の動きが激しい。秀忠の軍がまだ到着しない。家康はもう待たないかもしれない。何か秘策があるはずだ。昔は秀吉の十八番だったはずだが。今日は半蔵自身が出張っている。
「間違いないですな?」
 半蔵が陣幕の影から話しかけている。茉緒は反対の陣幕から声を聞きとっている。これはどうも家康と毛利に密約があるようだ。毛利は完全に秀吉の傘下にあったが、三成では不安なのだろう家康とも二股をかけたようだ。
「違わずと伝えてくだされい」
 小早川だ。半蔵の視線がこちらに向けられる。気配を感づかれたか?だが茉緒の後ろにも気配がある。服部に囲まれたか。この位置では切り抜けるのは容易ではない。
 半蔵の気配が消えても後ろの気配が消えない。
「茉緒殿ですね。死んだという噂もありましたが今は?私は毛利の魚住です」
「私を切らないのですか?」
「殿より手を出すなと言われています。毛利は勝つ方について生き抜かないと。その意味では同じ立場です」
「殿にお伝手下さい。明智光秀は家康の元で生きています」
 茉緒が振り向くと魚住の姿はなかった。
 石田三成は破れたり。








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Author:yumebito86864
夢人です。『夢追い旅』『ぽろんの女』『空白』『刺青』と書き続けてきましたが、すべて古いノートから書き起したものです。今回は初めて時代物でこれは私の夢の中で永い時間をかけて育ったものです。



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