復讐の芽 ***藤林長門守***
復讐の芽 ***藤林長門守***
暗殺1
 京に入ったが茉緒は凛にも弾正にも会わず2倍ほど大きくなった今井宗久の京屋敷に忍んだ。宗久の茶室に見た顔がある。さる顔の藤吉郎だ。
「秀吉殿、織田殿はいつ京に上られる?」
「紹介していただいた将軍とは話が出来ましたが、弾正殿は拒まれておりまする」
「天下が見えてきたのですなあ」
「殿は弾正殿を気に入っています。どうしたものか」
「戦われるとよい」
「それでは?」
「弾正は強いと思ったら手のひらを返しますよ」
 茉緒が立ち上がろうとしたとき金縛りにあっているのに気付いた。これは殺される!
「弾正はここまでの器かもしれない」
 声が心に響く。だが殺気が全くない。両手が乳房を掴んでいる。
「果心居士?」
「茉緒はまだまだ伸びる」
「弾正は日本一の天守閣を建てる。人は形あるもので日本一を具現しようとするとそこで終わる」
 それだけ言うと幻のように消える。おそらくいつになっても果心居士にかなうことはない。彼には殺気がないのだ。それに乳房を握っていた手は骨のような感触だった。










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魔王10
 茉緒が小屋の前に転げると忍者が10人ほど出てきた。ほとんど同時に洞窟と小屋が吹っ飛んだ。もうもうとした砂煙に抜け忍村の下忍の弓が取り囲む。これならほぼ互角だ。茉緒がゆっくり輪を閉めて行く。煙の中からもう現れる様子はない。茉緒は目で合図を送る。
 矢が一斉に飛び出す。だが3人しか倒されない。転がった服部忍者が下忍を1人2人と切り捨てる。その1人を道場主が切り捨てる。茉緒は飛び上がって後ろを見せている忍者を2人切り捨てる。それで茉緒に向き直った。刀を地面に擦らせて深く沈む。そのまま走り抜けるように2人を切り倒す。
「完全に塞がった」
 源爺が崩れた小屋から出てくる。
「洞窟に爆薬が仕組まれていたと思っているだろう。取り敢えず時間はかかるが石を除けて行くしかない」
 実際洞窟修復には3日を要した。服部の忍者の死体が小屋も含めて12体出てきた。源爺の意見で滝壺側は崩れたままにして獣道に避難した女子供を迎える。源爺の長い穴掘りがなければ抜け忍村は滅んでいたかもしれない。
「次はこの村を捨てる日も来るだろう」
 そうかもしれない。
「鉄砲を買いましょう」
 おそらくこれからは鉄砲の時代だろうと思う。信長の顔を思い出した。
「忍者も終わりが来るだろうな」
「まだ時間があります。生き残り方を見つけます」





 

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魔王9
 早くも神社に服部忍軍が集結している。統領の服部保長自身が指揮を執って出てきているようだ。遠目で保長を見つける。今回は長槍隊も出さず剣を抜いた戦いはしないと決めている。到底数と力では勝つ可能性はない。女子供年寄りを洞窟の上に送り出している。全滅しても次の命を残すと決めた。
 すべての戦える忍軍は火薬玉を腰にぶら下げている。源爺は至る所に爆薬を隠した。茉緒は宗久から買った鉄砲を構えている。早くも忍軍がまやかしの道に踏み込んでくる。茉緒が手を上げる。火薬玉が年寄り女忍たちが投げ込む。代わって弓隊が弓を打ち込む。これを繰り返す。
 だが服部忍軍からも火薬玉の応酬がある。確か30人は倒したかと思うが、こちらも体勢が崩れて5人ほどが倒された。
「まず年寄り女忍たちを洞窟に戻せ。下忍は一斉に弓を打ち込め!」
 煙の中から服部忍軍が現れる。バタバタと倒れるがその後ろから弓隊が現れる。茉緒は控えの手練れとともに弓隊に切り込む。肩に矢が刺さる。だが弓隊の3人を切り捨てた。下忍も切り込んでいる。一度勢いに押されて服部軍が下がる。
「茉緒下がれ!」
 源爺の声がする。彼が特大の火薬玉を投げ入れる。
「ここまでだ。中に引き入れる。そなた達も中に入って全員討ち取るのだ」
 洞窟に引き下がるのを見て鉄砲を構える。服部忍軍は取り囲うように輪を縮めてくる。焼き払われた小高い丘に保長が立っている。忍軍が飛び出すのを見て茉緒は的を絞る。源爺の叫ぶ声がする。引き金を引いた先に保長が後ろ向きに倒れる。
 茉緒が洞窟の中を走り抜ける。その後を追うように服部忍軍が追ってくる。小屋に潜り込むとそのまま外に走り抜ける。








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魔王8
 今日に繋ぎが来て凛を置いて下忍を5人連れて抜け忍村に走る。源爺からの伝言だ。いよいよ服部の軍団が攻めてくる。前回は藤林で凌げたが服部では難しい。まやかしの道だけでは防げないその思いが強い。
「源爺!」
「戻ってきてくれたか」
「情報は?」
「すでに忍狩りの忍軍は100人服部を出た。子供達が情報を送ってきてくれている」
「使える忍者は?」
「戻ってきた忍者を入れて15人。年寄りと女忍で10人だよ」
と言って茉緒を滝の洞窟に連れて行く。
「ここに上がって見て」
 洞窟に梯子で上の窪みに上ると岩に隠れて洞穴がある。
「これは頭を降りて10年掘り続けた」
 細い穴を抜けると明るい光が入ってくる。
「ここは崖の上の獣道だ。ここから永遠と道が続いている。南海に抜けれるという。ここの奥に獣道から外れた大きな洞窟がある。ここに女子供を移そう」
「でも戦うわ」
「分かっている」
「今日はから荷物を運び出しましょう」








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魔王7
 堺に押し寄せる前に十河 一存が亡くなった。弾正の動きは早い。まだ情報が伝わる前に堺の三好屋敷を2千の兵で取り囲んだ。昨夜果心居士が戻ってきていたのだ。三好衆の主だったものを捕らえた。今井宗久は三好の息のかかった納屋衆を入れ替えた。
 次の朝には千5百の兵を引き連れて弾正が京に向かう。茉緒は先頭を走って街道 の調査をしていく。堺の三好が襲われたという報告がすでに京に届いている。これは茉緒の手のものが流した。伏見を通り過ぎた頃大和の豪族が千5百加わった。京の三好はすでに館を空けて当然のように弾正が入る。三好の天下が終わった。六角も赤松も睨み合ったまま動けない。
 弾正は5百を連れて将軍を訪問する。茉緒に化けた凛が小姓姿で弾正で付いている。
「ご機嫌よろしゅう?」
「弾正は怖い奴よな?」
 茉緒は下忍7人と百地の暗殺隊10人と屋根上で戦っている。これは百地の最後の恩返しの仕事のようだ。3人を切られると鮮やかに引き上げた。
「藤林も相手なさるか?」
 屋根の向こうに別の忍軍が先程から窺っている。藤林もすでに本体は筒井に傾いている。百地はどうするのか。一人が立ち上がって剣を抜く。これは前の小頭の子分だった男だ。茉緒も周りを押さえて構える。
「魔王か?」
 男は走ってきて飛び上がる。茉緒も同じタイミングで飛び上がり体を半捻りする。男は茉緒を通り過ぎ背中を見せる。その背中に一太刀を浴びせる。これも体が覚えていたのだ。その瞬間藤林の忍軍は消えた。






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Author:yumebito86864
夢人です。『夢追い旅』『ぽろんの女』『空白』『刺青』と書き続けてきましたが、すべて古いノートから書き起したものです。今回は初めて時代物でこれは私の夢の中で永い時間をかけて育ったものです。



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