復讐の芽 ***藤林長門守***
復讐の芽 ***藤林長門守***
騒乱5
 宗久を通じて茉緒に秀吉からの仕事が入った。だが嫌な予感がする。浅井への本願寺から物資の運搬の阻止の依頼だ。早速秀吉の隊に合流して浅井への抜け道を捜索する。秀吉は野盗のような500人を配置した。
「本願寺らしい一隊が荷を運んでいますが、守っているのは忍者ではないかと?」
「荷隊の人数は?」
「2000人はいるかと」
「攻撃は?」
「藤林の逃げろの合図を送れ」
 だがすでに火矢と火薬玉が投げ込まれた。茉緒は手勢を連れて山側に回る。荷が燃えている。秀吉の野盗はこういう仕事に慣れているのか手際がいい。人夫に混ざっているのはいいが忍者が受ける仕事ではない。
「凛!」
 そんな声に気づいたのか人夫姿の凛が近寄って来た。
「私の後をついてくるの」
 山を越えると小川に着いた。凛の組は3人を失った。
「荷隊は大半が焼かれて1000人ほどが死にました」
 茉緒の組は引き上げてきたようだ。
「慎吾は?」
「先頭にいた」
「百地は?」
「先に浅井に入った」
「どうも動きを読まれている。どこで合流するの?」
 凛は俯いたままだ。











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騒乱4
 京の茉緒に繋ぎが入った。それには慎吾が百地と組んで本願寺の仕事に加わったと言うことだ。知らせを持ってきたのは薬売りを束ねている女忍だ。
「そんな話は聞いていないが?」
「どうも百地に小頭が持ちかけたそうです。どうも筒井さまが織田と反信長網の双方に道を付けられたという噂があります」
 戦国時代にはあることだ。だが百地との付き合いにはあまり乗り気でなかったのだが。
「今回は戻ってきた凛さまの部隊も呼ばれています」
「何組が?」
「3組です」
 茉緒は正面を切って織田とは対抗したくなかった。どうも信長は恐ろしい。
「本願寺に入った藤林の行動を調べてほしい」
と言ってその足で二条城の将軍を元を走る。天井から覗くと相変わらず書状をしたためている。
「茉緒か?今朝織田軍は浅井征伐に出かけたわ。これで織田包囲網にかかる。本願寺も手のものを動かした」
「織田は滅ぶのでしょうか?」
「滅ぶ」
 将軍は確かに情報を手にするのが早いが、その理解が利己的すぎる。宗久の言うように5分5分だ。だから両方に駒を張る。
「朝倉は頼りになりますか?」
「優柔不断だがな」
 どうも反織田軍は一枚岩ではないのだ。











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騒乱3
 織田が浅井に敗れたという噂が伝わってくる。畿内の状況も芳しくない。取り敢えず伊賀では前回の藤林百地合同戦略で服部が強引な攻めを控えた。宗久からの依頼で京に鉄砲と火薬を運び込む。将軍は二条城にすでに移り住んでいるが、またもや信長との間がこじれてきている。
「茉緒ご苦労」
 久しぶりの秀吉だ。かなりやつれた顔をしている。
「浅井が裏切ったそうですね?」
「殿で死にそうだったわ」
「信長さまは?」
「機嫌が悪い。宗久は本願寺勢に相当鉄砲を流しているそうだの?」
「信長さまが?」
「商人だと笑っておられる。だが儂は好まん。だが・・・」
と歯切れが悪い。
「最近千利休 さまと?」
「そちらも百地と組んだとか?」
「織田さまは忍者がお嫌いと?」
「そうらしいが。だがそうでもないわ」
 この辺りは秀吉も口が堅い。















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騒乱2
 小頭の慎吾が戻って来て服部襲撃に参加することとなったが、どうも慎吾は百地と組むことをよしとしていないようだ。茉緒は藤林の頭巾をかぶって間道を走る。百地も30人がすでに境界の正面に陣を張ったと報告があった。服部も百地の動きを察知して結界を張っている。
 茉緒は影武者の藤林と入れ替わり鉄砲隊を指揮する。慎吾は火薬玉を持ち山際を移動する。
「百地のことは不満なのね?」
 口を空けて語りかけるが返答はない。
 百地と服部のぶつかりが起こる。服部の屋敷から20人ほどの軍勢が飛び出す。慎吾の隊が屋敷と蔵に火薬玉を投げ込む。慎吾の隊に向けて更に服部の忍者が20人ほど飛び出してくる。報告を受けていたより屋敷に大勢の忍者がいたようだ。茉緒の手が上がると一斉に鉄砲が火を噴く。
「藤林だあ」
と叫ぶ声がする。
「百地が押し返されています」
 伝令の声に茉緒は鉄砲隊を移動させ服部の後方から鉄砲を打ち込む。後ろを振り向くと服部屋敷と蔵から煙が上っている。
 これで藤林と百地が組んだことが明白になる。服部はどう出てくるのか。それと百地とはどこまで組んで行けるのか。茉緒は弾正や宗久や信長を見て古い考えから自分が解放されていきつつあると感じている。
 引き上げの合図を鳴らす。









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騒乱1
 百地の屋敷が100人ほどの服部忍軍に襲われた。藤林の奥方が殺されたことと相まって百地藤林に危機感が出てきた。慎吾は2組を大和の国から順慶の本拠地に移動した。順慶は一時の3倍ほどに領地を広げている。凛は奈良から荷を運び宗久の依頼で紀州長島に荷を入れ替え鉄砲を200艇を運び込む。宗久は信長と天秤をかけている。それほど不透明な時代だ。
 百地とは薬売りを通じて繋ぎを取っている。それで百地と藤林の境界にあたる神社で話し合いを持つことになった。それで茉緒の組を周辺に張り付ける。茉緒は一人で神社の中に入る。すでに片方に若い男が座っている。跡継ぎの息子が出てきたようだ。
「魔王だな」
「よくご存知ですね?」
「何度も弾正の戦いで見ている」
 互い覆面の中から見いていたのだろう。藤林と同様に百地もお頭は顔を知られていない。茉緒は覆面を取った。息子が唖然とした顔で見とれている。
「くの一か?」
「抱かれていいけど死ぬ気でね。それより私の案は?」
 茉緒の案は服部宗家の蔵を焼き払うことだ。本当は盗み出したいところだが、それほどの兵力がない。藤林は薬売りを入れていて進入路をすでに確保している。
「藤林は30人出せる」
「百地も30人出そう」
 





  

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Author:yumebito86864
夢人です。『夢追い旅』『ぽろんの女』『空白』『刺青』と書き続けてきましたが、すべて古いノートから書き起したものです。今回は初めて時代物でこれは私の夢の中で永い時間をかけて育ったものです。



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